檀上さん、福山でお会いした方です。
福山ではおこがましくもアイドルという設定で握手会をしていたのですが、無理やり握手をしていただいたときの手のぬくもりが心に残っています。
似顔絵は、少し目が離れ気味になりました。
頭の両側をぎゅっとプレスすると、目は寄りましたが顎も心なしか尖ってしまいました。
朝食中も寄り目がちを意識して、片手で皮膚を押さえています。
自分が知らないだけで、押すと体が軽くなるツボがここにあればいいのになあと思いました。
サンドイッチとミルクティーの朝食をとったあとは、再び布団をひっかぶって登校拒否。
もう行かないと間に合わない! という時間を1分過ぎてから、やっと飛び起きてスタート地点に走りました。
間に合った!
今日は63km。
全日程の中で最長距離になるのがこの日です。
みんなわたしのように登校拒否してるんじゃないかと期待していたのですが、全員揃っていた上に1位の女性ランナーはハツラツと準備運動をされていました。心身の質が違うって感じ!
昨日全力で走ってしまったせいで肺がやられたわたしは、徐々に体を慣らしながら走ろうと、武内さんと並んでスタートしました。
海岸沿いを走ります。
風に乗って運ばれてきた細かな水しぶきが、シャワーのようでいい気持ちです。
武内さんと無言のままゆっくり刻む足音に、幸せを感じました。
坂道を上がるとエイドです。
カラフルな傘のもとにランナーたちの黄色いネオンカラーが集っています。
右にぴょんぴょん走っているのが武内さん。
一緒に走るの初めてだな~と感慨にふけっていましたが、そういえば半年前北京で一緒に走ったんでした。
武内さんはわたしの脳内の「一緒に走ったことない人フォルダ」に入っているようで、一向に更新されずさみしいです。この写真を見て忘れないようにします。
10kmを通過したところで、下り坂をきっかけに先行しました。
63km、どうやったら時間内に完走できるんだろうと頭を抱えている武内さんに、前半このペースで走れたら後半は貯金がかなりできるはずだから、がんばってねゴールで待っているね! という励ましの言葉を、「じゃ」という一言に込めました。
今日も皆様が助けてくれますように!
それから北回帰線を通り(写真なし)、観光スポットの洞窟を横目で見ながらドタドタ走りました。
去年走れた道が今年は走れない。
目視では気づかないほどゆるい上り坂も、アレルギー反応のように体が素直に反応して重くなります。平衡を察知する精密機器としてどこかに就職口がないだろうかと思いました。マラソンにおいてはこの機能いらないです…。
ゴール。
美香さんおつかれさまでした!
台湾では、マラソン中にもマラソン後にも、親指を突き出すグーのポーズが一般的です。
最初は恥ずかしく感じましたが、慣れました。
応援したいけど声が出ない時や応援に答えたいけど声が出ない時に、グッとやっておけばいいのでとても便利なポーズなのですが、間違えて日本でもやっちゃわないかが心配です。
ホテルの部屋の窓からは、さっきまで走っていたゴール直前のコースが見えました。
運動場の左側の道路です。
ランナーがひた走っています。
武内さんは大丈夫だろうかと心配です。
個性的な場所にマメができていました。
今日は走っている最中、音楽がものすごく聴きたくなりました。
帰ってスマホで歌を再生すると、細胞ひとつひとつにメロディーが染み込んでドラッギーな感覚になりました。
普段は音楽中毒じゃないのに、体が思いがけない変化を見せるのは不思議だと思いました。
制限時間30分前です。
「アキコ、ハイメイラオマ?」
「アキコ、ハイヨージーゴンリー?」
今回わたしが覚えた中国語です。
アキコはまだ着きませんか?
アキコはあと何キロありますか?
通りに出て応援。
マリア…じゃなくてリンダだった!
リンダおかえり!
ナイスラン! あとちょっと!
続々と到着するランナーに声を張り上げていましたが、もうあと7分。
あきちゃんはまだ来ません。
やっと姿が見えました!!
急いで! 間に合わないよ! と思いましたが、これだけのランナーが一緒なら、みんなちゃんと計算して間に合う時間にゴールさせてくれるだろうと思って一安心。
いやあ~ハラハラしました。
おめでとう!
この日も、全員がゴールできました!
お疲れさまでした!
ありがとうございましたー!
アキコをよろしくね! とお願いしていたお兄ちゃんにねぎらいの言葉をかけると、「ミカもシンクーラー(おつかれさま)、お誕生日おめでとう」と後頭部の美香さんにも語りかけてくれました。
お誕生日ではないと思うけどありがとうございます!
アイシングするための氷を補給。
氷は「ビンクヮイ」。
ビンチーリン(アイスクリーム)のビンだな、などと、レース中に中国語を少しずつ学んでいます。
エレベーターでも、数の言い方を教えてもらっています。
イー、アー、サン、スー、ウー、リオ、チー、バー、ジョー!
わたちたちの部屋の606は、「リオリンリオ」。
食堂があるのは2階なので、エレベーターのボタンは「アー」です。
夕飯は豪華なものでした。
脂っこい料理の中に、お刺身が!
和食を食べたいなんて思っていなかったはずなのに、一口食べると止まらなくなりました。
なんたるすがすがしさ! 至福の口内です。
もうわたしの胃腸は油についていけないんだと思いました。お茶漬けを欲する口が老人でした。
それから茶でもすすろうと思って麦茶を注ぐと甘くて萎えました。
よく見ると麦茶調合茶とあります。
甘いものは大好きですが、今はそんなスイートな気持ちでは…。
お刺身には甘くないお茶で行きたいです。
会の途中にはバースデーケーキが運ばれてきて、今月お誕生日の方々へ、バースデーソングが送られました。
後頭部の美香さん、12月生まれかもよ! 前に行きなよ!
武内さんに背中を押されましたが、わたしは美香さんは6月生まれか11月生まれだと言い張って、席を立つことなく終わりました。
12月だったらどうしよう!
けれどもケーキは誕生月以外の人にも皆に配布されたので一安心です。おいしくいただきました。
食事中も、就寝中も、アイシングに勤しみます。
クーラーボックスの前は氷を求めるランナーの行列ができています。
会がおひらきになって皆が帰ったあとのテーブルを見るとごちそうがまだたくさん残っています。よく食べるとされるウルトラランナーの集まりでは珍しい光景です。
それぞれ疲労が限界に達してきているようでした。
ごちそうを味わいきれずに無念です。
ごちそうさまです!
ホテルに戻ると、スタッフのマルコがどろどろした甘いオートミール飲料を差し入れてくれました。
エイドで固形物を食べていないわたしを心配して買ってくれたようです。
マルコ、日本にも来てね! 全力でもてなします!
台湾のみなさまに本当によくしていただいて、マラソンはろくでもないけど今日も良い一日でした。
美香さんありがとうございました!