武内さんを迎える合宿当日までにランニングの習慣を身につけておこうと、わたしは再び、空き時間の大半を走り込みに費やすようになりました。
得だとか損だとか、そういうことをすごく考えた。
以前は、「少ない手数で仕事量をいかに多く見せるか」みたいなテクニックが肝心だと思っていたし、大会本番でも、「最低限の練習量で際どく完走」するのがクールだと信じて疑いませんでした。
略歴に、「○○大会完走」って書ければそれでいいから。
途中式はぶっとばしてでも、結果が手に入るのならそれでいい。
今でもそのやり口自体は否定しません。若い自分なりに賢く(ずる賢く)やりくりしていたんだと思います。
完走できるのならそれでいいんです。
問題は、完走できなかった場合です。
大会に参加するに当たって、努力もせず、思い入れもなく、のんべんだらりと走ってクリアできなかった場合、あとには見事に何も残らないことをわたしはリタイアの末にようやく悟ったのでした。びっくり。
参加費だってかかります。こちとら低所得者です。お金かけてやってる以上、「学び」とか「気づき」とか、せめて自己啓発セミナー級の特典は欲しいじゃないですか!
練習に時間使わないと、コストパフォーマンス下がるわ。
歳を経て、わたしはそう実感するに至りました。
涼しい顔で、ニヒルに構えてるばっかりじゃ思い出のコストパフォーマンスが下がっちゃう!
わたしは武内さんから記憶障害を疑われるほどいろんなことを覚えていないのですが、時間をつぎ込んだ事柄は頭の中にとどまり易くなります。
量より質ってよく聞くし、すぐれたパフォーマンスのためには練習の質を上げるべきなんだと思うんですよ。でも質の善し悪しを判断するのは素人には難しいです。馬鹿にもわかる基準として、もってこいなのが「時間」です。しかも不景気の強みと言うべきか、幸か不幸か、わたくし時間には恵まれておりますもので……。
時間を無駄遣いして良質な思い出を手に入れるわよ!
今年は去年よりもずっと多くのマラソン大会にエントリーしました。