後頭部ビジネス

若木くるみの後頭部を千円で販売する「後頭部ビジネス」。
若木の剃りあげた後頭部に、お客さんの似顔絵を描いて旅行にお連れしています。


*旅行券の販売は現在おおっぴらにはしていません。*

2017年10月13日金曜日

 

エーゲ海に沈もうとする太陽が、空で発煙しているところ。



いよいよ明日は大会です。
天気予報は曇り。気温23度。
とても涼しく、走るのには絶好の天気予報です。

毎年おなじみのフェニックスホテルで、わたしたちはレース前の高揚感を、ちゃんと満喫できていました。
スパルタももう4度目です。ビビりのわたしもいい加減慣れていたし、なにより今年はあきちゃんが初の選手参加。走ることのドキドキを分かち合える存在は、心強いものでした。

「目標は低く、志は高く」というのが、今大会におけるあきちゃんのスローガンです。
サロマでは目標を高くしすぎてだめになっちゃったけど、志なら高ければ高いほどいいから、って。
「目標は完走。それだけ。でも完走は絶対する。完走するって決めてるから。」


「ただの完走」だって全然低い目標じゃないと思うけど、完走することを「決めてる」って表現するあたり、武内さんらしいと思いました。
別に褒めてない。
なんかそれ、神様に対して不敬じゃない? と思ったんです。
完走もリタイアも、自分の志とは無関係に、勝手に神様が決めるものだとわたしは拗ねたようなことを考えていて、この時点では武内さんの完走を半分ぐらいしか信じていない。自分が初年度リタイアしているしね。あんまり簡単に完走されたら寂しいとも思いました。
だけどあきちゃんに、「くるちゃん最初の年ほんとに神頼みしてたもんね〜。『神様神様』ってバカみたいに天を仰いでいたよ」とにやにや笑われて、やっ、やめてよ……! 練習不足をひっさげて神にすがるしかなかった4年前を思い出して頬を染めながら、「ああ、あきちゃん自信あるんだなあ。ちゃんと練習してきたんだなあ」って、その時ストンと腑に落ちました。
そうか、あきちゃんは完走するんだなと思った。


レース中、エイドで受け取る荷物を仕分けし終え、日本語での大会説明会も終え、明日の準備はバッチリで夕方5時。
わたしたちはベッドで就寝体勢をつくっていました。
はじめから談合の上、ふたりともレストランでの夕食には行かないつもりでした。人に会うとどんな刺激が入るかわからない。気が昂って寝られなくなるのを恐れていました。
レース本番の不安より、レース前夜に眠れるかどうかの不安のほうがわたしには大きくて、今ちゃんと寝られさえすれば完走間違いない。でも睡眠に関しては努力の仕方がわからない。どうがんばったら安らかに眠れるのか。絶対寝たい。人生ベスト級の熟睡が欲しい。……ってあんまり意気込むと空回りしちゃうから、ぼけーっと興味ないふりでやわらかく眠りを待つ……。

そうやってわたしが入眠に向けて懸命にメンタルを整えていると、あきちゃんが「お昼もうやってないよね」「パン持ってくればよかった」みたいな、なんかおなかすいたみたいなこと言い出すんですよ! お昼はお昼でちゃんと食べてるんですよ!?
「はあ!? じゃあ勝手に夕食行きなよ!」
でも、武内さんがひとりで夕食に行くと、自分は一食分損することになるとか思ってどうも悔しく、ここにきて沸き起こるさもしい貧乏根性。
やはり自分も夕食を摂るべきなのではなどと迷いが生じて、入眠が遠のきました。


とか言って、18時にはもう寝ていた。

去年のスパルタでは熊本の山下さんにもらったガレットを食べてよく眠れたので、今年もせがんで送ってもらい、お守りみたいにアテネに持ってきたのです。
当初の予定どおり、ふたりでガレットを分け合ってルイボスティーを飲み、そしたらあっけなく眠りについていました。