地面をキックなんてできない。
足裏がコンクリートにひっついたみたいな、へばりついたガムみたいな、ねばねばした走りで前半の関門通過がギリギリになる。
身軽な武内さんは出だしから速い。
同じ大会に出る時は必ず、武内さんが先行する。
50kmを過ぎてやっとわたしが追いつくというのがいつもの展開で、今回もレース前は、「中盤以降のどこかで並走できたら」と話はしていたものの、特に約束などはなかった。
各々、自分のペースで。
もし会えたら励まし合おう、程度のドライさを保ってスパルタスロンがスタートした。隣同士で走るはじめてのスパルタ。
でもわたしががんばったんですね〜!
ふたりくっついて「(ありがとう)」の単語ができるユニフォームの性質上、できるだけ隣にいたいと思って、いつもの入りよりも速く走ろうと、うんとがんばったんです。
あきちゃんもあきちゃんで、序盤飛ばさずだいじに行こうと心がけていたそうで、なんとなくわたしにペースを合わせてくれました。
迷惑にならぬよう、遅れぬよう、あきちゃんと隣り合わせで走っていると、苦手な滑り出しもつらくなくて、これは快調だと感じました。
「調子いい。」とわたしはあきちゃんに言ったそうです。「こわいぐらい調子いい」って。
気温も涼しかったんです。
風もあって、全身で気持ち良くて、なんだか頭のてっぺんまで風のお風呂につかっているみたいだと思いました。
いいなあ、走るって気持ちいいんだなあと思いました。
ちょっとランナーズハイだったんだと思います。
月経周期の乱れみたいな、開始5kmで来た早すぎるランナーズハイ。
そしてこのあとの240km、もうこれ以降一度も、ランナーズハイはやって来ません。