松本さんです。
たぶん会社員です。
武内さんとの共通の友人です。
ついでに雑談にも花が咲きます。
「日本人?」
「ここの学生か?」
「どこかの学生か?」
「社会人なのか?」
「では何者か?」
少なくとも後頭部の松本さんは社会人なんだから、適当なところでイエスと言えばよかったのですね。
おじさんがイタリア人っぽい顔をしていたために、つい「チャオ」が出てきてしまった、わたしの無意識の優秀さに気づいてくれますように!
駅の混雑ぶりは、夕方の通勤ラッシュだからかと思いましたが、どうやら遅延によるものだったようです。
前回来た時は無人でしたが、今日は扉が開いています。
よかった!
しかしスタッフの方に見学を申し込むと、今日はもうクローズよ、と肩をすくめられました。
名簿は既に埋まりかけていて、時間帯も細かく書き込まれています。
予約を取れただけで大進歩と思うことにしました。
これはバラガン邸の向かいにあった自転車です。
サドルが高くて跨がれませんでした。
警官です。
ポケットに手を突っ込んで、ゆるい笑みを浮かべている様子はまるで族です。
メキシコシティ在住のまあやさんの、警官にいちゃもんをつけられてお金をせびられた体験談を思い出しました。「こっちの警官は薄給で地位も低いから、めちゃくちゃなんだよ。気をつけてね。」
しかし踵を返して歩き出すと、「ごめん! ポリフォルムね? こっちよ!」と、再び老夫婦が駆け寄ってきてくれたのでした。
案内役を買って出てくれた老夫婦に感謝しながらも、そのゆっくりしたペースに焦りが募ります。
ポリフォルム・シケイロスの閉館時間は午後6時。
もう間に合いません。
予想外の計らいに、喜びを爆発させて館内に入りました。
圧倒的なボリュームです。
館内に漲るエネルギーのうねりの中で、ただただ、声もなく圧倒されました。
しかし感動で打ち震えるわたしに、武内さんはボケーっとした顔で「わたしは感じない」とか言って水を差してきて、そう言われるとわたしももう自分の感受性がただのミーハーな代物にしか感じられず、さっきまでの感動が激しく揺らぎました。
…いいじゃん!!
だめ!?
ギャーギャーわめいていると、武内さんがだめじゃないよとなだめてくれて、「半立体ってとこに興味がないだけかも。平面で勝負しないんだーって思ってるのかも」と解説してくれたので、じゃあいいやと納得しました。
わたしは元々レリーフが好きだからいいです!
ポリフォルム・シケイロス、素晴らしかったです!!
自信がなくてすみません!!!
さっきの武内さんの真似をして「あんまり感じない」と言って去ろうとしたら、奥行きのある画面に突然ランプが灯りました。
びっくりしてめちゃくちゃ感じた。
受付の方に何度もお礼を言って外に出ました。
バラガン邸、フリーダカーロの家、その他あらゆる美術館。
曜日や時間が合わず連敗が続いていた目的の美術館にやっと入れて、肩の荷が下りた気がするなあ…と思っていたら、本当に、肩の荷がない!!
トートバッグを二階に忘れてきてしまいました。
しかも出国前に松本さんにもらったトートバッグ…!
受付の方に、お礼を一からやり直しました。
12枚の壁画で形成された頑丈な鎧のような外観が目を引きます。
堅い外観とは裏腹に、受付の方が柔らかい物腰なのも泣けました。
自信を持って、ポリフォルム・シケイロスおすすめです!
汁のほうが少ないぐらい、お肉に豆に野菜にと、とにかく具沢山のスープです。
無心で食らいました。
何度も、何度もです。
食べても食べても減らないお皿って、子どもの頃に読んだ絵本の世界と同じでした。
あまりに親切にしてくださるので、何かわたしたちに魔力が備わっている気がしてきます。
後頭部の松本さんの魔法かなとも思ったのですが、ただただ本当にお客思いのお店だったみたいです。
ものすごく繁盛していました。
ごちそうさまでした!
今回はびっくりマークが多かったな!
たのしかった!
松本さんでした!
ありがとうございました!