六甲の関係者の方で、最終日に、同じく関係者の原さんといっしょに旅券を買ってくださいました。
おふたりとも色々旅行をされていて、おすすめの場所をたくさん教えていただきました。
以前、出品作家の半谷さんにお聞きして行ってみたかった、ジョグジャガルタにお仕事で行かれたこともあるそうで、もっと詳しくお話を伺いたかったです。
メキシコシティでお世話になっている、ひろしさんとまあやさんの素敵なアトリエには屋上があって、螺旋階段が憧れの暮らしの象徴でした。
朝、もう一度屋上へ上がって、爽やかなメキシコの空気を吸い込みました。
通行人もなくまだ静かな街並に、ビタミンカラーだけが元気に朝陽を浴びています。
メルカドと呼ばれる市場で、朝ご飯にしました。
外は寒くありませんが、あたたかいスープを飲むとほっと心が休まりました。
伊藤さんは健康志向かなと思ってにんじんジュースを飲みました。繊維がうるさかったです。
アイスが夏のTシャツ売り場みたいになっていました。ストライプ柄のせいだと思いました。
わたしはアイスに興味津々でしたが他の方々は見向きもしていなかったので、食べたいと言い出せず後悔しています。
メキシコを愛してやまない日本人の先輩から、覚悟がないならグアダルーペを撮らないよう諭されていた我々は、覚悟ってなんだろう…。怖じ気づいて中途半端な写真になりました。
写真を撮ることは文化の冒涜だという考え方に、わたしは恥ずかしながら初めて触れたのでした。メキシコの、特に地方の年配の方などは写真にうつることをいやがる方も多いそうです。もちろん許可をとってからカメラを向けるようにはしていますが、後頭部ビジネスという企画そのものが気まずく思えてきました。文化を知らないって罪深いことなのだと知りました。
カメラをひったくられないかという心配と、皆のペースを乱さぬよう後頭部の写真を撮らねばならない義務感と、現地の方の生活を傷つけないような配慮とで、毎日ずっしり疲れていました。
アロエだっけ? サボテンだっけ?
撮影許可をいただくのに必死で、質問したのに肝心の答えを忘れてしまいました。
考え深いメルカド散歩でした。
これから、飛行機でトゥクストラへ発ちます。
余分な荷物はひろしさんの家へ置かせていただけるということで、一切合切必死で荷造りしなくてもいいのは本当にありがたいことでした。
お昼の飛行機に間に合うよう、余裕を持ってタクシーに乗り込みました。
空港で、やっと日本円の換金ができました。
レートはとても悪かったですが、先輩に立て替えていただいているのがとても心苦しかったので、現金を入手できて安心しました。
あと、後頭部にウケて写真撮ろうぜと笑ってくださる方もいることに、落ち込んでいたわたしは大変救われました。
…おもしろがってくださる人がいるなら自分は、と思いました。
「それがわたしの覚悟なんだったら好きにすれば」と自分に言い聞かせると、それがとりあえずの答えになった気がして、前を向いて堂々と後ろを見せようと思いました。
搭乗を待つ乗客のイライラした空気が16番乗り場に溜まっています。
ぽっかり空いた時間を使って、ここで伊藤さんから原さんへ後頭部をリレーすることにしました。
浮かれ気分でいた旅で、真面目な気持ちで自分たちの活動に思いを巡らせることができてよかったです。
「勉強になった」って、大体別に楽しくなかった時に苦し紛れに逃げる言い回しですが、勉強になったとしか言いようがない。そりゃあ楽しいよりも苦みが先に立ったけれども、良い勉強をさせていただけた感謝でいっぱいでした。うそ。この時はまだ感謝感謝感謝感謝と意図的に病的に繰り返さないと感謝を忘れてしまいそうでしたが、時間が経てば絶対本物の感謝になるという自信があったから、ちょっと複雑な経路を辿ってはいるけど、本当に感謝でした!
メキシコ旅行というより内面旅行になってしまった。
自分探しみたいなことに後頭部のお客さんを付き合わせてしまいました。
伊藤さんごめんなさい。
でも、日本でひとりでやれよって感じだけど、日本でひとりでではできなかったのでした。
後頭部の伊藤さんがいたから、先輩の真剣な思いがあったから、武内さんの優しさがあったから、メキシコの方の明るさがあったから、色々考えることができました。
本当にありがとうございました!!
ありがとうございました。