リンダさんはブラックリストに載っているから飛行機に乗れないとか。
冗談なのか本当なのか真偽のほどはわかりませんが、風貌に信憑性があります。
よく職質されるとのことですが(でしょうね。)、そのたびにブルーハーツのリンダリンダを歌うから名前が「リンダ」って、誕生エピソードも仕上がってます。
リンダさんの初海外を請け負ったわたしたちですが、タイへはすんなり飛び立てたわけではありませんでした。
次のロシア旅行のビザ取得のために日程も考えずにうっかりパスポートを郵送してしまっており、タイに行こうとしてるのにパスポートは国内を移動中だったのです。
パスポートが着かなければタイに行けない!!
関空発の便に乗るため、武内さんはその日東京から夜行バスで京都へ向かうはずだったのですが、パスポートが届かないのならバスに乗る必要もなくなります。
わたしは夕方から深夜まで仕事なので、その前にパスポート到着の有無を確認して武内さんに連絡しなくてはなりません。
家を出る1時間前、郵便はまだ配達されません。
……どうしよう。届く可能性に賭けるのか。郵便局に問い合わせてみようか。
何も手につかず、ヤキモキしながら5分置きにポストを覗いているとやっとやっと、リミット20分前に郵便バイクが家の前に止まりました。
生き別れた兄弟に会えたみたいな出迎え方をしてこわがられました。
これでタイに行ける!!
安心して仕事に行ったら、武内さんから「バス乗ったんだけど通行止めのせいで到着大幅に遅れるらしい」との連絡が…。
バスと飛行機の接続もギリギリです。
次々と障害に見舞われる様はさながら映画のようでした。
映画でもいいけどハッピーエンドであってくれ。
早朝5時20分に着くはずのバスは結局1時間遅れで京都に到着。駅で待ち構えて即刻移動したら無事2時間前に空港に到着して、時間余ったね! と思った。
この頃わたしたちは「ギリギリ」のことを「ぴったり」とか「ちょうど」と呼ぶようになっていて、旅行も締切も何もかもとにかくすべてが綱渡りでした。
リンダさんの顔を描いて荷物チェックのレーンに入ったら、3つ後ろに並んでいる男性に肩を叩かれて、「あの〜、うしろに顔ありますけど〜(関西のイントネーションで再生してください/レミ〜、レミレドレミレレレレミシ〜)」と言われました。
…
ボケられたのか?
薄ら笑いで「へえ…。」とか言って気の利いた事全然言えなかったんですけど、「なんでやねん!」が正解だったのか……?
搭乗ゲートでもおばちゃんふたりが話しかけてきたり、関西はやっぱりノリがちがう。
見た事のないものに対しても果敢に攻めこんできます。
生きとし生けるおばちゃんのすさまじいパワーに圧倒されました。
おばちゃんとの濃密な語らいの後は、飛行機に乗るまでの一歩一歩をだいじに歩きます。
人類にとっては小さな一歩もリンダさんにとっては大きな一歩です。
さよならJYAPAN!!
(無意識にキーボード打ち込んだらスペル間違えてた)
ただ今アナウンス中
仮死状態
どこかで乗り換えました。
台湾だったかな?
記憶が、もう…。
記憶がぼんやりとしかありません。
乗り換え待ちのゲートにはタイっぽいいかした制服(?)の僧侶が普通にいて、旅情がかき立てられました。僧侶のオレンジ色を目の端で捉えながらA4サイズの一区画で充電。
機内に乗り込んで、2度目の機内食。
タイの首都、バンコクにいよいよ着くと、オレンジの人たちがモニターの大画面にずらりと整列されていました。
もう一観光した気分です。
まだ先へ進むと、モニターに自分の姿が同時に映り込むハイテクノロジーなアトラクションもあって、うまく説明できないけどすごい未来の技術のようでした。
いないいないと思っていたけど、あとで書類を見たらちゃんと場所が明記されていて、説明文とか見ないからなあ…。反省しました。
無事合流してコンビニへ。
おなじみ、セブンイレブンです。
北海道出身のわたしは「イレブン」と呼ぶけど、熊本出身の武内さんは「セブン」と呼びます。京都の知人は「セブイレ」と言っていました。
東京の、リンダさんはどうですか?
今回は、行き帰りの送迎のみがついている完全フリーのツアーです。
ホテルも自分たちでとったわけではないので、まったくタイの予習ができていません。
好き/嫌いで後頭部を判定されたのは初めてです。新鮮な反応でした。
我々にとても理解があった。
変だな、と思っていたら「トモダチハ、イマセン。」とかで、なんのことはないただの「類は友を呼ぶ」でした。
リンダさんもきっとゴップさん好きだよ、ゴップさんもきっとリンダさん好きだよ、と思いました。いい出会いでした。