バスから電車に乗り込んで、わたしと武内さんは桃園へ、石川さんは台北へ。
同じ方向の電車だったので、行動をともにさせていただきました。
途中の乗り換え駅で時間ができました。皆で外へ出ます。
わたしは日中の空き時間で石川さんとたくさんお話できたので、入手したばかりの石川さん情報を武内さんに披露するのが楽しくてなりませんでした。
「石川さんね〜、なんと! 糖質摂らないんだって〜!!」
石川さんが目の前にいるのにご本人そっちのけで、ギャーギャー騒ぎました。
「糖質摂らなくなってから、おなか空かなくなりましたね。体も軽いし。」
冷静に語る石川さんに、わたしは信じられない思いで顔をしかめてみせます。
「糖質って、甘いものですよね? お菓子食べないってことですか? 炭水化物もですよね……? 人生の墓場!」
「くるちゃんの体は糖質のみで出来てるもんね。」「そう。糖尿で死ぬんだ。」
石川さんには申し訳なかったですが、「台湾かき氷が食べたい」とごねて、甘党発、糖尿行きの旅に強制的に付き合わせました。
しかしこの季節、台湾かき氷は見つからず、「甘いならなんでもいい」と譲歩してスムージーを注文。
マンゴー、いちご、パイナップル、あずき。
どれか好きなの、「せーの」で指差すことね。
せーの!
石川さんが指差したのはあずき味で、だれともかぶってなかったです。
けっこうじじむさい嗜好だなと思いました。
あずき以外のスムージーはすべてジューシーでみずみずしく、ストローの狭いトンネルを通ってきた果汁が口いっぱいに弾けるのが春の雪どけみたいでした。生命の息吹を感じました。
あずきのやつだけは割と普通で、石川さんが飲んでたからかもしれない。井村屋のアイスバーいい感じに溶かしゃいいじゃんと思いました。
車内では、わたしと武内さんとで両方から挟みうちにして質問攻めしました。石川さん捕虜みたいでした。
練習時間とか走行距離とか生い立ちとか、根掘り葉掘り。石川さんは「自分のこと話すの苦手なんです」って困惑しながらも、一問一答に付き合ってくださいました。
色々すごかったけど、一番びっくりしたのは「毎日走っている」という一言です。
うそ、ランオフの日、ないんですか!? そんなバカな。
一日でも走らない日があるとだめになる気がして、みたいなことをおっしゃっていました。
その気持ちはもちろん理解できますが、そこで思うように継続できないのが人情ってもんでしょうが〜。
末恐ろしすぎて、今までにない時代設定の語り口になりました。
石川さんが飲んでいたのは「爆汁檸檬茶」とかいう謎のドリンクだったのですが、それすら崇め奉る対象のように思えて、石川さんがお帰りになられたあと空のペットボトルに向かって直立し、90度のお辞儀を捧げました。
でもあれですよね。今まで1日も休まなかった人が何かのきっかけで休んじゃうと、そこで突然糸が切れて走れなくなっちゃうとか、そういうのよく聞きますよね。
それを踏まえた上で、石川さんにはやっぱり毎日走っていてほしいし、必ず毎日走っている方がこの世に存在するという事実に、自堕落なわたしは強く勇気づけられます。
石川さん、これからも日本の未来で居続けてください。
今度爪のアカ煎じて飲ませてください。