後頭部ビジネス

若木くるみの後頭部を千円で販売する「後頭部ビジネス」。
若木の剃りあげた後頭部に、お客さんの似顔絵を描いて旅行にお連れしています。


*旅行券の販売は現在おおっぴらにはしていません。*

2015年1月19日月曜日

和久井さんとすーさん


和久井さんは新潟在住の友人です。
ウラジオストクと新潟は飛行機で1時間だそうで、和久井さんにとってはご近所のロシアを旅してしまいました。



似ないなあ、髪型のせいかなあ、和久井さんおでこの人だからなあと言って、帽子を目深にかぶせてカバーしました。和久井さんの和やかさを表現するのが難しく、諦めました。
これからわたしたちはケーブルカーに乗って展望台へ行きます。

まずはバスでケーブルカー乗り場へ。
何番バスに乗ればいいのかわからないので、人がたくさん乗りこむバスにくっついていきました。
運転手さんに、事前に調べておいた「フニキュラー」という、ケーブルカーを指す英語を言いましたが通じず、展望台の画像を見せてやっとわかってもらえました。
フニクリフニクラとフニキュラーって関係があるのかなあと思って調べてみると、フニクリフニクラとはフニコラーレというイタリアのロープウェーのことだそうで、語源が同じでした。

バスを下車するともうあたりは薄暗く、どちらに進めばいいのか武内さんと顔を見合わせます。
「展望台なんだから上のほうにあるんじゃないかな。」
坂道を急ぎ足で駆け上がると、ちょうど赤いケーブルカーが出発するところ。

ああー。行っちゃったね。
がっかりしましたが、すぐに青いケーブルが来たのでほっとしました。

赤と青が、交互に運行しているようです。
六甲の大きなケーブルとは違って、一両だけの小さなケーブルカーでした。

無人の運転席で記念撮影。前方にはさっき出発した赤いケーブルのお尻が見えます。

運賃はおばちゃんが乗車中に徴収しに来ました。
ケーブルカー=高い、のイメージでしたが確か30円ほどの激安価格でした。

発車してすぐ、進行方向に次第に大きく見えてきた駅舎に、まさかあれが終着? と思っていたらそのまさか。ほんの数分で頂上に到着しました。
歩ける距離でした。
「市民の足」という言葉に初めてリアリティを持ちました。足を使えたのに乗り物に乗ってしまった…。消費カロリーを損しました。

けれども窓から眺める、街が日没の中をゆっくり進んでいくような景色は趣のあるものでした。

ケーブルカーを降りると、うっすら雪の残る広場がひらけました。
背の高いベンチには深く腰掛けると足がつかないくらいです。

毎晩ホテルの窓から遠くに見ていた、キラキラの明滅する塔がすぐそばにありました。

あれに登るのかな。
塔が展望台なのかと思いましたが、そんなわけないでしょと一蹴されました。

階段にはレーンが二本並んでいて、もしかしたら自転車用じゃなくてスキー用なのかもしれません。


階段を上ると圧巻の景色です。
燦然ときらめく、ゴージャスな街並が広がっていました。
ここが展望台だろう、間違いないよと言い合いました。
日が暮れる前になぜもっとテキパキ行動しなかったんだろうと後悔していたのですが、見事な夜景を前に、ぐだぐだして成功だったと思いました。

観光地らしいお店もありました。
恐らく市内で唯一のお土産物やさんです。
ここでしか買えないと思うと物欲にスイッチが入って、我々にしては珍しく夢のあるものを買いました。だるそうな店員さんに、「20時閉店だ」と急かされるまで熱心に物色しました。

トイレのロゴは「ヴィクトリー」で、「勝利!」って誇れるようなうんちを出さなくてはと思うと肛門に力が入りました。

お土産屋さんの隣にあった巨大なマトリョーシカです。

妙に野暮ったいのはサイズのせいかなあと不思議に思っていたのですが、近づいてみて理由がわかりました。


顔の表情も衣装も文字も、印刷ではなく手書きだったのでした。しかも多分マッキーで描いてる。細部の仕事の粗さが目立ちました。自分の後頭部用の画材もマッキーなので、街の観光の目玉をマッキーとか身近な文具で済ませるなよと不満に思いました。
でも、寒さで手がかじかんで安定したラインが描けなかったのかなと思って見ると、ロシアっぷりが上がってちょっとよかった。

いちゃつくカップルがもたれている欄干は老朽化が極まっていて、途中で柵がすっぽり折れ失せているのが不吉でした。

普通に非常に危ないです。
カップルが危険地帯で愛を確かめ合っていると思うと応援のエールでひやかしたくなりました。

 

この橋の長さどれくらいかな? 
武内さんに聞かれて、……400メートルとか…? と言ってみたら、どういう感覚してんの、1キロはあるでしょと言われて、あとで調べると正解は1400メートルでした。
タイでも「今日何キロぐらい歩いたと思う?」と聞かれた日があって、「5キロ。」と答えたら、軽い筋肉痛になったらしい武内さんから「は! そんなわけない! 5キロで痛くなるようなヤワな足じゃないよ!」と猛反論を受けたのでした。もっとたくさん歩いたらしかった。

自分の距離感覚に問題があることが証明されてしまいました。

ところが適当に歩いてホテルへ帰ろうとしたら今度は意外と距離があって辿り着けず、また迷子…。

しかし絶望しかけたところで目の前にホテルが現れて、大成功です。
これからわたしたちは、サプライズで和久井さんとすーさんの合同お誕生会をします!

まず11月20日がお誕生日の和久井さん。

お誕生日おめでとうございます!

ありがとう!


それから深夜、12時を越えて日付を跨いですーさん!

11月21日がお誕生日のすーさんです!

お誕生日おめでとうございます!

和久井さんもすーさんも親しい知人で、毎年お誕生を祝っているのですが、2ヶ月遅れで事後報告をしてもあまりお祝いにならないなあと思いました。
お誕生日のサプライズはその日に実況してこそだと反省です。

しかし合同誕生会と称したパーティーは進み、お誕生日の歌を歌って、スーパーで買ったピアノの発表会の衣装みたいなケーキにフォークを入れました。

化学の味がしそう…。
毒味の気分でしたが、見た目よりもふつうのケーキでおいしかったです。



ぐいぐい頬張りましたがここでギブアップ。一口目では全部食べられる自信があったのですが、スポンジの間にはごってり重たいバタークリームがサンドされていて、外側の生クリームと相まって滅茶苦茶ヘビーでした。展望台のカップルを思い浮かべて意識を散らしてみたりもしましたが、もう一口も食べられない…。

食いしん坊モンスターだと思っていたけど凡人でした。

珍味の好きな武内さんは、甘いケーキとしょっぱい鮭のマリネを交互に食べることで意外にも健闘して、最終的に半分以上は成敗できました。

これは、今日買ったおみやげの一部です。

なんとこれは自分たち用にお揃いで買ってしまった。
赤十字のマトリョーシカかな? 変わったデザインだなと思っていたら、じっと見ていた武内さんが「これ、包帯じゃないよ! ヘルメットの警備員だ! ベスト着てるし」と気がついて、なつかしの緑のおばさんだったのでした。
2年前のAPEC開催を記念して発売されたものが余ったらしく、このデザインのマトリョーシカだけ何体も売れ残っていたのです。「実際APECの跡地の大学行ったし、思い出だし」とか言い訳しながら手にとったのですが、セール品を思い出にするってお土産選びとしては反則な気がしました。でも定価だったら絶対買ってない。そしてこのマトリョーシカはマトリョーシカなのに中身がからっぽで、独立心が強かった。帰国の際には小物入れとして活躍しました。

みなさんお誕生日おめでとうございました!