後頭部ビジネス

若木くるみの後頭部を千円で販売する「後頭部ビジネス」。
若木の剃りあげた後頭部に、お客さんの似顔絵を描いて旅行にお連れしています。


*旅行券の販売は現在おおっぴらにはしていません。*

2015年1月31日土曜日

一日目、中村圭美さん53km

今日は6日間に及ぶ台湾333kmマラソンの初日です。
クジを引いて出たのは中村さん。六甲での内覧会にお越し下さいました。

セットした目覚ましは5時20分。
飛び起きて、髪を剃って服を着替えて顔を描きました。
中村さんのやわらかい雰囲気を再現するのが難しく、左目が実際よりもにやついてしまいました。
これから朝食会場へ向かいます。

去年から二年連続でこの大会に出ている見慣れた顔も何人かいますが、初めて見る方も思ったよりもたくさんいます。
この人は速そうに見えるけどこういう人ってだいたい見せかけだけだよなと思っていたら後で本当に速い人だとわかって不覚でした。後の二位。

朝食は朝6時からの予定でしたが珍しく5分前行動をしたらまだ皆待っている状態でした。
どちらかというと普段は穏やかな人種であるランナーたちも、朝はさっさと食べてスタート前に排泄時間を確保したい思いが強く、早くしろと苛立つ空気が蔓延しています。

開場と共に行列に並んで、バイキングのお皿を受け取りました。

去年の初日はおなかが重たくて苦しんだので、食べ過ぎに注意しました。
セーターを脱げばもう走れる格好でいるので身支度は簡単です。


集まった順から、走る前の記念撮影。
スタートぎりぎりまでトイレで粘っていたわたしたちがほぼ最終選手です。
今日は53kmを走ります。
去年は7時スタートの予定がなんだかんだで10分遅くずれこんだので、今年も遅くなるだろうとタカをくくっていたら、7時ちょうどに号砲が鳴ってあわててしまいました。

この日のエイドは10kmごと。
10kmくらいなら大丈夫と思って、わたしは給水ボトルを持って走りませんでした。
最初の10kmは給水なしでもいけましたが、体が乾ききってからの次の10km、また次の10kmが全然持ちません。エイドの度に一リットルを一気飲みしても、一度枯れてしまった体にはなかなか水が浸透しないようでした。
民家の水道、自転車のお兄さんの差し出してくれるボトル、道ばたのポンプから漏れている水流、水、水、水、ただもう水を求めて前に進みました。
気温は高くなる一方で、頭の中は水を欲する強烈なイメージでいっぱいでした。

暑いのはわたしだけかなあ、台湾ではこれぐらい普通なのかなあと思っていたら、武内さんも父も、周りのランナーも「今日は暑すぎる」と口を揃えていたと後から知りました。
体感では30度以上あったように思います。明日には暑さに体が慣れていますようにと願うばかりでした。

10kmエイドではスポーツドリンクとオレンジと塩、20kmでは水、豆花という甘いデザートとスイカ、30kmではスープとミニトマトとコーラ、40kmと47kmでは固形物には見向きもせずにひたすら水分摂取に没頭しました。30㎞エイドにはご飯や麺もありましたがパス。
ラスト5kmで大会車の方が渡してくださったビニール袋の中の氷が、おいしくてありがたくて仕方がなかったです。

ゴール。
6時間15分。

去年よりも30分近く遅い。

顔見知りのスタッフ、マルコ(右)が「イチバーン」とハグで祝福してくれたのですが、「ノーノーマルコ、ちがうよわたしは女子二位だよ。」否定すると、「いいのよわたしの中ではクルミが一番よ!」と言われて泣きたかったです。
それにまだ初日だし。マルコは慰めてくれましたが、期待に応えられないと思うと申し訳なくて千切れそうでした。

水、スポーツドリンク、紅茶、とにかく思うさま液体を飲みちぎって、やっと人心地つきました。

去年男子の二位だった田上くんは今年は一位でした。格差…。
ちなみに田上くんという名前は、わたしと武内さんのみが用いているあだ名で、本名は難しい漢字の台湾の方です。

今日の宿。
毎日の宿泊施設にギャップがあるのがこの大会の特徴です。
掛け布団と敷き布団の違いがない布団が積まれています。

シャワーを浴びて戻ると、ちょうど父がゴールしたところでした。
アキコはどうしているか? マルコに聞くと、元気だから心配しなくていいとにっこり言われましたが、ゴールが思ったよりも早そうなので迎えに行くことにしました。




走っている時には恨めしかった真っ青な空のもと、明るい景色が視界にわんわん吸い込まれていきます。
もっと余裕があれば走っているときも景色に心奪われたりできるのでしょうが、実際最中は景色とかどうでもいいと思って、万物にむかつきながら走っています。全然健康的な爽やかスポーツじゃない。


歩いていると途中で大会車に拾われて、アキコでしょ? と送り届けてもらえました。
もういるかもういるかと目をこらしていたのですが、後半ガクンとペースダウンしたらしい武内さんの姿はなかなか捉えられずやっと5km先でキャッチ。そんなつもりじゃなかったのに武内さんといっしょに炎天下を1時間以上も歩く羽目に…。


制限時間には充分間に合うのでやる気を失っている武内さんに、どさくさに紛れて後頭部の中村さんの写真を撮らせました。

汗とシャワーで消えてしまって、顔がもう薄いです。

日焼けもばっちりしました。

そうこうしていると、向こうから逆走してくる黄色いウェアが見え、姿勢の悪さから父だと判別できました。
父と武内さんは30km近くまでいっしょに走ったそうですが、そこから武内さんが見えなくなったとかで、「見えなくなった」ってだいたい先行するランナーに使う用語では? 置き去りにした側も使っていいの? 違和感を覚えました。
とにかく暑かった、明日からの天気がこわいねという話をしました。

武内さん、笑顔でゴールです。


おめでとうございます!

時刻は3時半頃。
傾いた光がランナーの疲れた輪郭にやさしいベールをかけていました。

お疲れさまでした。すごいよ!


這うように部屋に倒れ込んだ武内さん。

カメラを向けられてもポーズは寝そべったままです。

ようやく上体を起こすと床には武内さんのシルエットが抜かれていて、極限まで起きることを拒んで、手の届く限りの範囲でごちゃごちゃ荷物整理をしていた様子が手にとるようにわかりました。
写真を見た武内さんは、「これ合作でしょ!?」と自らののび太を認めていなかったのですが、ちげーよ全部あんたのちらかした荷物だよ!!


なんとかシャワーを浴び終えて、洗濯です。

今になって分厚い雲で覆われ出した空に、遅いよと文句を言いたくなりました。



夜にはついに一雨来てしまい、洗濯物を取り込むランナーでごった返しました。

これから晩ごはんです。
食材のように積み上げられた食器の数々……。食器棚とかないんですね。

疲労のため食欲はあまり湧きません。

のろのろお箸を動かしていると、元気の出るお花(?)をもらいました。
食感はレーズンに似ていて、味は甘い柴漬けみたいで、でもその味覚ももしかして見た目にひっぱられているのかなと思うと自分を信じられませんでした。
とてもおいしかったです。

わたしが寝るのは右側です。
スペースが狭いのは、布団を広げることすら億劫がって、足下の布団をただ片手でぐいっとのばしただけだからです。
気力は全くなく、早く眠りについて明日のために超回復しなきゃと思っていました。


今日の完走メダル。

中村さん、1日いっしょに過ごしてくださってありがとうございました!
マラソンとてもつらいです。