ランチタイムです。
大会案内には「市長との昼食会」とあり、会場は改まった雰囲気です。
足を引きずってなんとかドアまで辿り着くと、入り口付近のテーブルが、ちょっと周りが注目するほど、盛大な拍手で出迎えてくださいました。
派手な登場をした割に、根が小さいわたしたちは座席を見つけられずにいました。
「ここ、いいですか…?」勇気を出して日本の方に聞いてみたら、「ここはチームの席だから。」ってすげなく断られ、す、すみません。
結局、にぎやかな会場を背にして、奥のだれもいない円卓にぽつんと席をとることになりました。いつもふたりきりでつるんでいて感じ悪いですよね、でも違うんです、ほんとに、ただうまくできないだけなんです……。
しょんぼり乾杯していたらスタッフの女性が2名いらっしゃり、いくらか体裁が整って安心しました。
結婚式に業者を使って偽装友人を集める気持ちが今、わかる……。世間体こわいです。
えー! 手作りなんですか、すごいー!
いっぱいお礼を言ったら、次に指輪までいただいてしまって慌てました。
うおお、すごく感謝したいけど、感謝したらどんどん出てくるから喜びづらい……。
お手洗いに失礼すると、個室が少ないためちょっとした待ち時間があり、隣の男子トイレの方から「若木さんですよね」。声をかけていただきました。
ボーッとしながら用を足し、席に戻って、「あきちゃん……、い、いま、なんか、王子さまがいた……。」
「は? どういうこと?」
「だから、少女マンガに出てくる王子さまみたいな…」
「何それ。日本人?」
「そう。なんかね、前髪がね、長いの……。」
それからふたりして王子の視察に出向き、「あ! あの人あの人! ほらあそこ、キラキラしてんの!」「ぎゃ! ほんとだ! あれか!」ふたりの間の、半径10cm間だけで騒然となりました。
我々の不審な動きに気づいて遠くから微笑まれる、余裕な感じもすごかったです。
学生気分で失礼しました。
トイレでは簡単な自己紹介もあったはずですが、輝きに気をとられてお名前を失念したため、彼のあだ名は「風貌」になりました。
のちにお話してみると立派な方だったので別に「王子」でもよかったと今では思いますが、イケメンへの偏見がつい……。
次にお会いした際に勢いで「風貌」と呼んでしまわぬよう気をつけます。