後頭部ビジネス

若木くるみの後頭部を千円で販売する「後頭部ビジネス」。
若木の剃りあげた後頭部に、お客さんの似顔絵を描いて旅行にお連れしています。


*旅行券の販売は現在おおっぴらにはしていません。*

2014年12月16日火曜日

坂本さんと象

六甲ミーツアート総合ディレクターの坂本さんです。
こちらは六甲の、オープニングの時のお姿のようです。
率先して後頭部ビジネスの旅券を購入してくださったのに更新が会期中に間に合わず大変申し訳ありませんでした…。

雨男との評判が高い坂本さんですが、この日は好天に恵まれました。
さすがにタイまでは坂本さんの魔の手も及ばないなと思っていたら、翌日の同時間帯にすごい豪雨に見舞われた。こじつけですけど。

…そんなに似ませんでした。
輪郭に限界がありました。
やつれた坂本さんです。
頬をすぼめて旅行していることにしてください。

目に染みるほどの青空です。

武内さんが7年前のタイ旅行で象に乗ったという話を聞いて、いいなあいいなあ乗りたいなあ、象どこにいるかなあと言っていたら、嘘みたいですが、ちょうどそのへんに、居ました。
アユタヤは小さなまちでした。適当にぶらぶらしていても好確率で象に会えるのではないでしょうか。
(もちろんガイドブックやマップを見て狙いを定めて行けるとなお良しです。)

象だ象だ! まったく苦労せずに会えました。
うれしくて騒いでいたら象との記念撮影に誘われました。40バーツ。
わたしたちは後頭部の坂本さんをメインに撮っており、係のお兄さんたちも笑ってくれていたのですが、「こっちこっち」と前足に座るよう指示された瞬間象の鼻に胴体を絡めとられました。

体勢を後ろ向きに変える余裕はありませんでした。

それから、いざ象に乗るべく勇んでお財布をひらくと、35バーツ(約160円)しかありません。象に乗るには400バーツが必要です。
あきちゃんお金出してー。
もしもスられた時のために、と我々は資金を半々に分けて持っていました。
ところがそのお金を武内さんが「持ってきてない!」とか言い出して、はあ? 何考えてんの? 憤ってすごく責めた。近くに両替所ないんだけど。どうすんの? 象はともかくホテル帰るお金もないよ。

(所持金不足が発覚する前に武内さんも象と記念撮影をしているのですが、その写真がないのは翌日わたしがスマホをなくしたからです。でもわたしは武内さんに責められなかった。人間の器の差…)


象のそばでガイドツアーの客引きをしていたうさんくさいおじさんに、両替所の場所を聞いたらトゥクトゥクで連れて行ってもらえることになりました。
ひとり1バーツ? 安い。と思って。


風が、武内さんへの苛立ちをなぎ払ってくれました。

両替したのは1万円だったかなあ。

あー、今現金が1万あるって運転手にバレちゃう。よろしくない事態だなあと思いながら、そわそわしているところ。
連れて行かれたのはデパートの中の両替所だったのですが、レートは空港やバンコク市内よりもずっと良かったです。ほっとしました。



デパートの近辺にはわたしの大好きな女子高生もいたし、トゥクトゥクに乗るのもおもしろかったし、両替もできたし、これで象にも乗れそうだしよかったね、1バーツ(3円)って安すぎるよね。こっちでは1バーツにすごく価値があるんだろうね。
とかのんきなことを言い合いながら、降りて満面の笑みで「ありがとう!」と2バーツ渡したら、嘘だろ、って顔で苦笑されました。ひとり1バーツじゃなくて100バーツ要求されました。

……ひとさし指を1って出されたら、1バーツだって…思いませんか…?
思わないか………。
でも、ワンパーソンワンバーツ? って、何度も何度も、確認して、運転手さんも、ワンバーツ! って元気よく答えたから、乗ったんですよ……?

さすがに1ってことはなかろう、非常識なのは我々だろうとも思うけど、電車が15バーツだったことを思うとやっぱりやむを得ない勘違いだったと思うし、この距離で200バーツ(タクシーの初乗りは10バーツ)って割とボラれていると思うけど、でも、とても、助かりました…。

ただし取引は200バーツ払っただけでは終わらないのです。
このあと我々は、彼らからガイドツアーの激しい勧誘を受けることになるのでした。

いや、自転車あるんで。→自転車積むし大丈夫
後ろの顔描き変えたりしたいし。→自由にどうぞ
もっといろんなとこ行きたい。→3箇所から4箇所におまけする

ああ、今自分はカモになってる! 断らなきゃ! でもさっき両替所に連れてってもらったし…という負い目がこのやりとりの間中ずっとあって、相手もそんなこちらの胸中を察しているのか、圧がすごいです。もう力関係は明白です。
全然。太刀打ちできずでした。
あちらはプロでした…。
毅然としてお断りして、頼もしいところを武内さんに見せたかったのですが、わたしはただの気の弱いおばさんでした。
結局ふたり500バーツで案内してもらう口約束を交わしてしまった…。
ああ、にやにやしている自分が憎いです。

たくさんの象、


たくさんの象使い。

象の皮膚に生えているうぶ毛は固くてタワシのようでした。
皮膚も均一なグレーではなく、細かい斑点があります。
鼻には穴がちゃんとふたつあることも、物珍しく、まじまじと観察しました。

乗った。

…。
象に乗ってるってわかる写真が撮れません。

ふたりの足です。
象の背中です。

ふたり(と象使い)の影です。
象に乗っています。

反対側から、観光客を乗せた象たちが次々と帰って来ました。
その象使いの方が写真を撮ってくれると手を差し出してきます。
スマホをお渡ししました。
これで自分たちが象に乗っている姿も撮れました。
よろこんでいるとチップの要求をされて、コインを出したのですが首を横に振って、「カミ、カミ。」って。日本語で。
なんだよそっちから言ってきといて大きい額要求しやがって。
あこぎだなと思っていたら、象が、長い鼻を伸ばしてきて、りんごを採るように器用にお札をつかむのです。なるほどなと思いました。コインだと象の鼻に吸い込まれちゃうから、だから象が受け取りやすい、紙のお札なのかあ。
考えた人天才でしょと思いました。
「サツ、サツ」じゃなくて「カミ、カミ」と言うのもよく練られていました。
人と象との素晴らしい連携プレーでした。

象が歩みを止めたと思ったらうんちの時間でした。
自分が今乗っているのは、うんちを出すような類いの乗り物なんだなと改めて実感しました。
わたしたちは今、命の背中に乗って運ばれている、とか思いました。

セブンイレブンに引き続き、わたしと武内さんの便の呼び方は異なります。
わたしはうんち派、武内さんはうんこ派です。
木立の向こうに突然ひらけた湖のまばゆさを象使いはとっておきだと言いたげに披露して、武内さんを「キレイ、カワイイ」としきりに口説いています。
あきちゃんはうんこ女だぞ。うんちのほうがかわいいだろ。

象から降りたら、ダッシュで逃げよう、もしかしたらガイド撒けるかもしれない。

ひそひそ話し合っていたのですが、下車ならぬ下象をする前に、もうガイドさんが下で待ち受けていて、笑顔いっぱい、こちらに手を振っています。
プロがそんな、獲物を逃がすような隙を見せるはず、なかったでした。

彼はにこやかに自転車置き場までついて来ると、慣れた手つきで車に二台の自転車を積み込み始めました。


鮮やか…。
茫然と見守るしかありません。
自転車を担保にとられたので、これでもういよいよ逃げられないと観念しました。


清掃のおばさんとの間に交わされた会話が気になります。

自転車と、仲良く荷台に乗り込みました。


まず着いたところは、WAT  LOKAYASUTHARAM。
ロカヤスタム寺院です。


運転席のギアと似たフォルムの遺跡でした。



中には何かありがたいものがあるんだろうなと思って、見て、たぶんその通りだったと思う。
ありがたいなあと思っている後ろ姿です。

この、だだっぴろい遺跡に背を向けてくるっと振り返ると、

背後には巨大な涅槃像があります。


全身が入りきらないほどです。

寝そべったらガイドさんに注意された。
あんなに適当そうなのにモラルあるんだと思って感心しました。

ちらほら居る観光客に、後頭部の坂本さんは注目の的でした。

どさくさに紛れてガイドさんに花を売り付けられたけど、今度は拒絶に成功。
その後も、おなかはすかないか、ゴハンはどうかと、油断したら一気に搾取されそうな気配がぷんぷん満ちていました。
こわい。こわいしかなしい。
この気持ちが傲慢かな。
傲慢なのは自分たちが普段、人から親切にされ慣れているからだろうなあと思いました。
いろんな人から、無償で愛(と呼ばせてください)を与えられ過ぎ。甘やかされています。美人でもないのに図々しいんじゃないの? と思う。これが本来あるべき、正しい人間関係のかたちなんだと思おうとしました。でもやっぱりそれはかなしいな、とも、思った。

川沿いをトゥクトゥクに揺られて、辿り着いた次の現場です。

WAT  PHU  KHAO  THONG.
プーカオトーン寺院。

てっぺんまでダッシュで登りました。

こちらは本堂かと思われます。

お堂の中には、不謹慎な顔の仏像が並んでいました。
顔だけでなく体つきまでおもしろく見えてきます。肩のいからせ方とか絶対おもしろがってると思う。
なにこれ現代美術じゃないの? 悔しいです。

猫ちゃん(犬かも)のおなかは地下への入り口になっていました。

中には食べ物系のお供えものが並んでいました。
わかんないわかんないけどなんか腐敗している気配がしてこわくて直視できませんでしたがなんかそれもますます現代美術に思えて仕方なくて、やばあ、早く出なくちゃと思いました。


とても印象に残っています。

ガイドさんが、ふたりのツーショットを撮影してくれました。
ガイドを頼んでよかったと思っています。
しかしガイドさんとの一悶着ハイライトはこれからです。

この時点ではまだ良好な関係でした。
坂本さんありがとうございました!