後頭部ビジネス

若木くるみの後頭部を千円で販売する「後頭部ビジネス」。
若木の剃りあげた後頭部に、お客さんの似顔絵を描いて旅行にお連れしています。


*旅行券の販売は現在おおっぴらにはしていません。*

2014年12月17日水曜日

ワットアルンと町歩き、大宮さん

大宮さん、ランナーの方です。
六甲にもよくいらしてくださいました。
兵庫県の村岡で開催されたウルトラマラソンの時の写真を送ってくださいました。

完走おめでとうございます!!

村岡はエイドが充実しているあたたかい大会です。

朝食のあとは寺院観光に行きます。


昨日と同じルートを通って、地下鉄の駅を目指しました。

色とかたちの並びが抽象画のような完成度でした。

パパイヤを買いました。
そんなに甘くなかったです。

後頭部が大宮さんだし…と思って、ランニンググッズのお店を一応物色しているところ。
武内さんはこの時からスポブラが欲しいと言っていたのですが買えずに、結局一ヶ月後、台湾でやっと入手することになります。

地下鉄の車体の東芝のロゴがすごいインパクトでした。
北欧っぽい配色がかわいいです。

これもかわいい配色です。

地図で通りの名を確認しながら慎重に進みます。
最初の目的地は、三島由紀夫が絶賛したとされるワットアルンです。



寄り道が多くてなかなか進みません。
マラソン大会でもそうだよね、エイド寄ってるとなかなかゴールできないんだよね。思い出しながら歩きました。



たくさんの分岐路がある大きなロータリーで迷いながらも進路を定めました。
普通はバスかタクシーに乗る場面でも、ランナーの意地でつい徒歩を選択してしまいます。

クジで大宮さんが出た時に、しまった白い帽子持ってきたらよかったね、と悔やんでいたのですが、路面店に運良く帽子をみつけました。
満足です。

外はすごい湿度です。


方角はあっているようです。
気持ちに余裕が生まれました。

ちいさなパンチ穴に片目を当てて覗いてみると、向こうの世界が極めて特別なものに見えました。



夢中になってシャッターを切りました。
見え方に背徳感がありました。
厚紙でメガネをつくってそこにちいさな穴を開けたら、視界が狭まっていつでもドキドキを味わえるんじゃないかと思いました。
まだ実践はしていません。

川に出ました。
進行方向の遠く向こうに、高くそびえる塔がみえます。
あれかな。


この、長屋の周りの緑の地面は、草原じゃなくて水面です。
水の上、一面に漂っている草が、どんぶらどんぶら揺れています。
じっと見ていると船酔いみたいになりました。
大水が来たらいっぺんに家が沈んでしまいそうだし、事実、水害がないわけじゃないと思うのですが…。それが当たり前だと言われたら、受け入れるより他に仕方ない、かなあ。
達観した人生観を育めそうな住居環境でした。


アンティークなのかただのおんぼろなのか進路を決めかねているようなお屋敷や、

使い込まれたキティちゃんのバスタオル。


貧困と醜さはイコールではないと思うと、死ぬほど勇気が湧きました。
美しい空間がたくさんありました。
記憶しておきたいと思える風景があることに、わたしはとても励まされました。

生活していくことを全力で肯定したくなるような人々の笑顔でした。
希望、希望希望希望、希望!!!

簡素な遊具の色使いも、それぞれよく調和しています。




川沿いを進んでいたはずが、小道に迷い込んだあげく、目標の塔を見失いました。


通行人に何度も道を尋ねて軌道修正。

見えました。
もう目前です。
遠くても近づいても、息を呑むような見事なシルエットです。

僧侶に後頭部がうけたのが誇らしかったです。

場内に入りました。

いいね。

いいね。

武内さんと、無口になって仏塔を観察しました。

一見すると荘厳な雰囲気ですが、よく見ると、力持ち風のキャラがぐるっとピラミッドを支えているのがユーモラスです。

観光客も多いため、後頭部の撮影も頻繁に受けました。

ホェアーアーユーフロム?


ジャパン!
のやりとりを繰り返していると、その中に、「えっ、日本ですか!」という返事が。


まさか日本人だなんて、と驚かれましたが、こっちもまさか日本の方に声をかけられるなんて、という気持ちです。
彼はワットアルンには12回来ているそうで、てっきりお仕事でだと思ったら、「観光です。好きだから。」というお答えでした。はーっ、ただ好きってだけで12回も同じところに来てもいいのか!!  思いもよらない旅の在り方でした。


実際、とても良かったのです。
離れて見るとくすんだグレーの壁面も、近づいて見るとそのひとつひとつはカラフルで、凝った装飾が施されています。

…もしかしてこれ、おちゃわんで出来てない?

まさかあー。
そんなわけ…と思いましたが、本当に、かつてはお椀や小皿だったであろう陶磁器の集まりで花びらが表現されていました。
食器で、こんな密度ができるのか…。
感動のあまり意識がグラッとしました。
日用品が世界遺産にのぼり詰める凄み……。

もっと良く見ようとして、早速さっきの手法を使ってみました。
指でつくった穴越しに見る、ワットアルンです。

だまし絵みたいな階段を行きます。

てっぺんは遥か先です。



あちらの塔では修復作業の真っ最中です。
人の手で、ひとつひとつ、丁寧に行われているのであろうその手間を思うと言葉がありません。
ワットアルンのどこが素敵って、なんというか、整いすぎていないのが良いのです。仕事量が、ぎりぎり、感情移入できるクラスの建造物なのです。
北京で見た故宮博物院の造形も物凄かったけれども、あんなふうには取り澄ましていなくて、こちらは庶民派という感じです。
ワットアルンは、友だちになってくれそうな気さくな表情でわたしたちを迎え入れてくれました。



武内さんが、「7年前にも来ているのに、その時と全然感じることがちがう」と言っていたのが印象的でした。
「前はこんなにいろんなことを考えなかったと思う。」
「こんなにいいと思わなかった。」

ワットアルンを前にして、わたしたちふたりはこの良さをどうにか言葉にしようと一生懸命考えたのでした。
なぜこうも圧倒的に「良い」と思うのかを。

「人のためにつくったんじゃなくて神のためにつくってるからいいのかな」
「そうかあ!  見栄じゃなくてね」
「誰かに能力を誇示するための立派さじゃなくて、信仰が動機だから」
「作為がないのかな」
「エゴもないよね」
「土台がしっかりしてるから飾りは適当でもいいのかもね」
「祈り」

好きな作品や好きな作家が年々変化していくように、心に響く光景もその時々で当然変わっていくし、その中で、今、この視力で見るワットアルンが自分にとっては最高に素晴らしいのでした。今でよかったし、武内さんといっしょでよかった。後頭部の大宮さんもいっしょで、なおよかった。
得難い体験でした。


ワットアルンを堪能したあとは、渡し船で川を渡ってワットポーへ向かう予定です。

ココナッツジュースを買いました。
お姉さんがココナッツのてっぺんに切り込みを入れて渡してくれます。

ココナッツは上野のアメ横にも売っていたけど、武内さんもわたしも、「日本で飲むよりおいしいね」と同じ感想を持ちました。第一、安い。日本では400円くらいだったように思います(ここのお店では約100円)。
おいしく感じるのが、鮮度のせいなのか、空気のせいなのか、年齢のせいなのかはわかりませんでした。

見るべき時に見る、味わうべき時に味わう、会うべき時に会う。タイミングがいかに大事かを、身に染みて感じました。


ココナッツの内側の果肉をみみっちくこそげとっていると、雨が降ってきました。
皆、軒先へ避難してしばらく雨宿りです。
タイミング! と思って、ここで後頭部の顔を描き変えることにしました。

大宮さんありがとうございました!
わたしはこれからスマホをなくします。