後頭部ビジネス

若木くるみの後頭部を千円で販売する「後頭部ビジネス」。
若木の剃りあげた後頭部に、お客さんの似顔絵を描いて旅行にお連れしています。


*旅行券の販売は現在おおっぴらにはしていません。*

2014年10月25日土曜日

まゆみさん京劇を観に

「ゆうきくんの次のお客さまはー!」
ルーレットスタート!

「ストップ!」

停まったお客さんは、
まゆみさん!  
です!

お写真をいただいた時は、こんな清楚なお嬢さんが何の間違いでこの企画に参加してくださったのかと若干引いていたのですが、マラソンをリタイアした時、思いがけずすごく熱いメールを下さって、つい2週間前、後頭部ビジネスを始めるまではまゆみさん全く知らない人だったのに、いきなり「友だち以上親同然」レベルの重要人物に急浮上。しかもこのランクをまゆみさんは知らないと思うとより燃えました。どうだ参ったか、みたいな。火をつけたのはまゆみさんだからな、みたいな。

それで、武内さんに、特別美人に描いてほしいと余計なお願いをしました。

女子四楽坊を横目に、自分の後頭部にまゆみさんが生まれていくなめらかな感触を辿りました。

…「できました!」

ありがとうー!  
美人!
まゆみさんそっくりだよー!
「くるみちゃんに言われたから美人を意識したわけじゃなく、自然にできたんだよ。絵は作者に似るしね」と、武内さん。
ちなみに最後の一文はわたしの意地悪な創作です。フィクションです。

(※ わたしはもう、自分で後頭部を描いていません。あきちゃんが描くほうが早くて確実だから……)


それでは、まゆみさん!
これから京劇鑑賞へ行きますよ!!


開演まで、時間があまりありません。

京劇鑑賞の予定はホテルに着いてから急遽決めたため、先ほどまでのガイドとは別の、李さんとおっしゃる方がご案内してくれました。

今日は花の金曜日。

北京名物、渋滞のせいでタクシーだと所用時間が読めないとのことで、地下鉄乗り場へ急ぎました。

地下鉄構内に入る前に、また保安検査がありました。
入場待ちの行列ができていましたが、ガイドさんがすごい形相で保安官に詰め寄ると、VIPゲートみたいなところから通行できました。

旅行ガイドの権限が強い国なのか、李さん個人に強いバックがついているのか。それとも単に押しが強けりゃなんとかなるのか。
押しの強さが秘訣なら、わたしも真似できそうです。

中国の地下鉄は、運賃一律二元。
日本円で、40円しません!
京都の地下鉄の五分の一以下の値段です。(ただしもうすぐ値上がりするそう)

何度乗り換えても二元!

車内でも果敢に撮影会をしました。

寝ているわけではなく、まゆみさんに車内の皆さんの反応を見せているところです。

劇場最寄りの駅まで行ってから、タクシーを拾いました。


タクシーは大通りを快調に飛ばします。

夜景に見とれていると、突然李さんと運転手さんとが激しい言い争いを始めました。

と、少しして、タクシーがUターン。
道を勘違いしていたとのこと。さっきの口論は、そのためだったようです。

渋滞と信号に阻まれて車はなかなか流れません。
開園まではあと5分です。
タクシーはさっき降りた地下鉄の駅に戻ってきました。
20分かかって、ふりだしに戻る。

隣で、父が穏やかにきれていました。

運転手は決して謝らず平然としていて、李さんは「大丈夫間に合います!」と明るく豪語していて、わたしも武内さんもヨーロッパ時間に慣れていたせいで劇が時間通りにはじまるわけないとのんきに高を括っていて、そんな中、父だけが生真面目に苛立っていました。
…お父さん、その憤りは内に押し込めないで運転手にぶつけてもいいと思うけど?

しかし父は激昂することなく、また文句を言うこともなく、苦い顔をしながらも遠回りしたぶんまでタクシー代をおとなしく払っていた。

タクシーが止まった途端、悠々と構えていた李さんが「ついて来てください!」と言い残し猛ダッシュで劇場に突進。長い通路をいくつかターン! 後ろを振り返ることは一度もなくて、我々の健脚を信頼してもらえたのは誇らしいですが、本当に見失いそうでした。

ホールに着いて扉をあけたらもう舞台がはじまっていて、あー。と思った。

あー。
「父不機嫌になる、の巻」だー。

遅刻はたった五分だったのですが、中国って時間をきっちり守る文化圏なんだな、日本と同じだな、と新鮮に感じました。

ジャスミン茶と中国のお菓子、アーモンドなどが用意された、欧米人だらけのセレブ席で京劇を鑑賞しました。


西遊記など、演目はいくつかありましたが、どれも中国の古典でのんびりした劇でした。

中国語と英語の字幕もありましたが、舞台とは離れたところにスクリーンがあるので両方見るのは難しかったです。

李さんが、京劇はテンポが遅いから退屈っちゃ退屈、かなあ…?  とおっしゃっていましたが、そんなことはないけど…。

なんか、お茶菓子でもつまみながら、おしゃべりとかしながら、どうぞリラックスしてご覧になってくださいね、という、はなから諦めてる感じ、すごいなと思った。

それでいいの?  舞台に釘付けにしなくていいの?  何、ジャスミン茶でお茶濁そうとしてんの?

わたしは「茶でお茶を濁す」というフレーズを思いつけたので、満足して残りの京劇をとてもたのしみました。


劇が終わると、出口を目指す観客が後頭部のまゆみさんを撮影しにあとからあとからやって来て、みんな刺激に飢えてるんだなと思いました。

伝統よりも刺激のほうが即効性あるからなあ。

少なくとも驚きがあるという点において、京劇より自分の後頭部のほうが攻めてると思いました。

ガイドの李さんは後頭部を一目見た瞬間から「実におもしろい」を連呼していたのですが、帰りの車中では、何かこのバックヘッドを生かした活躍の場が必ずあると思うのだ、と本格的に後頭部の未来に思いを巡らせてくれて、わたしたちよりもよっぽどビジネスの達人っぽかった。誘えば「ワカキ撮り計画」に加わってくれそうな勢いでした。


ホテルに着いてから再びまゆみさんと夜の北京散歩へ。


北京散歩…のはずが、ふらっとマックに入ってしまいました。

中国は物価が安いはずなのに、日本と価格帯変わらなくない?  
武内さんに聞くと、「そうだよ、こっちではマックは高級品なんだよ」とのことでした。

高級と思って食べたせいか、今まで食べたマックの中でいちばんおいしかったです。


スーパーで、ビスケットクジになりそうなお菓子を探しました。


ショーケースの中にはドリンク類が無秩序に横たわっていました。

お菓子、買いました!

クジに使おうと「手指餅」というビスケットを買ったら思ったより短くて、結局ギリシャで買ったグリッシーニを使用

クジを入れる入れ物は、ジャスミン茶のペットボトルです。瓶と違って軽いし割れません。
    




名前を書いて、クジ完成。

一仕事終えたら入浴です。
まゆみさん、湯加減いかがですか〜?

あきちゃんはお風呂ギリシャ以来でした。わたしも久しぶりのお風呂で、旅行最高と思った。うちも、あきちゃんちも、家にお風呂ついてないんです。あとふたりとも和式トイレ。

父はホテルを取る時に、旅行会社に「豪華じゃなくてもいいからウォシュレット付きのトイレがありがたい」と要望を伝えたのですが、「ウォシュレットとは蓋のついた便器のことですか?」という返信が来て、果たして調べていただくと、北京のホテルでウォシュレットがある所は二軒しかないとのことでした。

ウォシュレットのおかげで豪華なホテルに泊まれてうれしいです。


家の蓋なし便器(和式)はマラソンの筋肉痛の時なんかにとても不便で、蓋あり便器(洋式)にわたしは憧れ続けていたのですが、日本ってやっぱり特別だよなと改めて思いました。ウォシュレットという単語が当たり前に誰にでも通じるなんて、とても豊かなことなんだと気づかされました。
蓋なしが普通!  蓋なしが普通!
中国に親近感が湧きました。




まゆみさんありがとうございました!
…って、トイレの話で締めちゃだめか。


北京はヨーロッパみたいに皆明らかな異国人の顔はしていないのですが、やっぱり日本とは少しずつどこか違っていて、でも、人種や文化の違いを超えて、後頭部の顔は確実に受けていました。

ああああ。大陸にも、通じた!!

大きな充足感につつまれて、わたしはまゆみさんと眠りにつきました。

(トイレの話から修正できた!)