後頭部ビジネス

若木くるみの後頭部を千円で販売する「後頭部ビジネス」。
若木の剃りあげた後頭部に、お客さんの似顔絵を描いて旅行にお連れしています。


*旅行券の販売は現在おおっぴらにはしていません。*

2016年5月11日水曜日

わたしたちの夢は台湾一周です

3月東京で、電車を降りて坂道を歩きながら、「♪このきもちはなんだろう」を武内さんと口ずさんでいたのでした。
南横から帰国したばかりのふたりは、まだ完走の余韻をひきずってどことなくはずんだ気持ちでいました。
ふたりとも曲をうろ覚えだったためワンフレーズ歌ったところで必ずひっかかってしまうのが気持ち悪く、スマホで探し出して再生しました。
タイトルは「春に」でした。合唱曲です。学校の音楽の教科書にのっていました。

木漏れ日に、それぞれの影を隠して歩きました。

「初めてフルコーラス聴くよ!」
はじめは興奮していた武内さんがやがて無言になったので、ふと顔を見るとなんと涙ぐんでいて、思わず「ええっ!?」と素っ頓狂な声が出ました。
何!? センチメンタル!? 
ちゃかす間を与えず武内さんはガッとわたしの腕をつかんで、「台湾一周しよう!!」切羽詰まった様子で言いました。
スマホから流れる合唱は2番に入っていました。一拍置いて、わたしはとてもうれしかったです。

マラソンでも展覧会でもなんにしても、助けを求めるのはだいたいわたしのほうで、武内さんから「あの大会出ようよ」とか、今まで、なかったです。なんとなく、これからもないもんだと思っていました。えー、あきちゃんそういうこと言ってくれるんだと思うとこっちこそ泣きそうでした。

「いつする!? いつ一周する!?」
本気っぽい武内さんのやる気が、春の魔法じゃないといいなとわたしは思いました。木漏れ日の緑地を抜けたら記憶もろとも消えてしまいそうな、光の環の中にいました。



それで、漫画のテーマは「夢想環島(モンシャンファンダオ)/わたしたちの夢は台湾一周です」に決まったのですが、描いたことで互いに満足してしまったのか、以来一度も台湾一周の話、出てないです。
消えたかな。

「夢想/環島」

わたしの担当が「夢」だの「想」だの、パステルカラーな漢字が揃っていて気恥ずかしかったです。


『夢想』のバランスを他で取ろうとして、背景の表現が過剰におどろおどろしくなりました。
246kmのコースは、台中をスタートして観光地のタロコがゴール。

「アアアアアア」
「走りながら泣いて、走り終えたら笑う。心配しないで、わたしは元気です。」

「3月の大会ではついに100kmを完走しました! とても感動しました! 次は……」


「自己最長距離に挑戦!!!」


「106km」
「一緒にがんばろう」

「ふたりの走り旅」

(くだもの)

(大会名長い)

(106kmと246kmとはスタート地点が異なります。106kmは清境スタート。ゴールは同じでタロコまで。)

「一起加油!」