ベオグラードです。
夜明けを迎えて、街が活発に動きはじめました。
大きな公園のベンチに腰かけ、後頭部を近藤さんから次のお客さんの顔に描き変えます。
次の方は、
ルルギネス、です!
公園でワンちゃんって上手くいきすぎなのですが、わたしはこの時本当にクジを引いたんだろうか? また八百長したんだっけな?
描き出しこそ自らペンを入れましたが、腕が疲れて目が回って、毛並みに酔いそうになったので武内さんにパス。
出来上がりを鏡越しに確認すると、後頭部が予想以上にふっさふさになっていてびっくりしました。
髪の毛もスタイリングします。
…ちがうな、ルルギネスはこんなツインテールじゃないな。
ワンワン。
もうおばさんなのにこんな髪型して笑ったりして、地球に謝りたいです。
ワン…。
地方の雪まつりの雪像コンテストで見たようなまろやかなシルエットと、ほどよい汚れが郷愁を誘います。
ベンチでは微動だにしないおじいさんがいて、これもオブジェかと思ったら人でした。読書をされていました。気になってたまらず、通りすがりに何を読んでいるのか覗き見してみました。聖書ではなさそうでした。
わたしは、犬をはじめとして動物の気持ちが全然わかりません。
六甲滞在時に、ご夫婦に「人ではなく、ペットの顔をお願いしてもいいんですね?」と念押しされた時には、「もちろんです!」と威勢良くお答えしたのですが…。
…やるべきことってこういう感じで合ってんだろうか?
ベオグラードのお友だちにがんばって「あそぼうよ」と誘ってみました。
そしたら社交辞令だったのにすごい勢いで尻尾をふられて、自分は実は犬なのかもと思った。
「自分は実は犬なのかも」のくだりを省略せず正直に言うならば、「自分の孤独な余生を癒してくれる存在は実は犬なのかも」という一文になるのですが、余生について不用意に考えると涙が地面にこぼれるので、まなこをカッと見開いてワンワン言いました。
ルルギネスとお友だちとの吠え合いビデオも撮れたので、武内さんから四つん這い解除令が出ました。
遊具に向かって一目散。
乗り物酔い状態になるため、ブランコを高く漕ぐのは子どもの頃から不得手です。
ブランコなんていつぶりでしょうか? 今でも相変わらず下手くそでした。
この公園の彫刻はどれも緊張感のない造形でとても良いです。
地方の雪まつりの雪像コンテストで見たようなまろやかなシルエットと、ほどよい汚れが郷愁を誘います。
ちょっと猫背な姿勢に親近感。
全部同じ作家の作品でしょうか。好きです。
武内さんが「多分有名な彫刻家だと思うよ、地元で」と言っていて、そっか…。
地元で、と補足するだけでランクが暴落する。「地元」という音の持つ負のパワーです。
邪魔にならぬようこっそり盗撮している様子を武内さんに撮られていました。
広い敷地には立派なラベルが各所に立っています。
ここはただの公園でなく、植物園なのかもしれません。
犬の散歩をしている方も何人もいました。
…やはり公園なのか。
公園で遊んだあとは、ルルちゃんと、二本足でベオグラード観光。
「ねえねえルルギネスってどういう意味?」
歩きながら、武内さんが、またよくわからないことを言い出しました。
意味って…。その質問がどういう意味?
「日本語ではなんて言うの?」
え。ルルギネスって固有名詞じゃないの?
「えー、ルルがギネスみたいな…じゃないの?」
そうなの…? エリザベスとか、ジョイナーとか、そういうのじゃないの? 和訳できないと思うけど…。あきちゃんだって、明子の意味は何だとか聞かれたら困るでしょ?
でも、明子についてはもっともらしい答えがありそうな気がするし、ルルギネスにもやっぱりちゃんと意味があるのかなと思いました。
教えていただきたいです。
後頭部にルルギネスがいる間、武内さんはわたしのことを「ルルちゃん、ルルちゃん」と呼んでいたのですが、後日、「思い出した。なんか、ルルちゃんってすごく呼びやすいのはなんでかなってずっと思ってたら、小さい頃わたし心の中で、犬を飼うならルルちゃんって決めてたんだった! うわーすっかり忘れてたよ!」
そう興奮気味に話していたのに、そのまた後日「まちがえた。ララちゃんだった。」と告白してきて、なんか…それは別に黙っててもよかったんじゃない…?
「犬を飼うなら」というそもそもが希望の国の想像上の話なんだから、ここは「ルルちゃん」ってことにして、奇遇だね! で完成させてもいいのに。
でも、それを口に出して「自分に嘘をつきたくないんだ。」とか言われたら困るので、「へえーそうなんだあ。」と適当な相槌を打ちました。
そう興奮気味に話していたのに、そのまた後日「まちがえた。ララちゃんだった。」と告白してきて、なんか…それは別に黙っててもよかったんじゃない…?
「犬を飼うなら」というそもそもが希望の国の想像上の話なんだから、ここは「ルルちゃん」ってことにして、奇遇だね! で完成させてもいいのに。
でも、それを口に出して「自分に嘘をつきたくないんだ。」とか言われたら困るので、「へえーそうなんだあ。」と適当な相槌を打ちました。