石井さんの送ってくださったお写真。
右側の方のほうにまず目がいってしまうのはやむなしと思われますが、
石井さんは、六甲ミーツアートの開幕初日の朝、植物園にいらしてくださった一番目のお客さんでした。
例によってイベント当日になってもなお作品が出来上がらず、バタバタ準備していたわたしに、「あなたに会いにきたんです」とお声をかけてくださった方がいて、なんですと? でした。
「制作道場、見てました。」
石井さんは六甲ミーツアートの直前までやっていた、熊本小国での展覧会の模様をご覧になってくださっていたそうで、すべてにおいてとにかく自信のなかったわたしは、「今年も素晴らしかったですよ」というお言葉を、「こ、今年もですか? 今年も、とおっしゃいましたか?」死ぬほどありがたく額面通り受け取りました。
その言葉だけで、あと3日は生きていけますと思った。
そんな数分の逢瀬だけで、わたしの頭からは石井さんの微笑みが離れなくなり、石井さんのクジが出るのをずっと楽しみにしていたのですが…。
傷めた足がなかなか治らず、石井さん、身動きするのが億劫な回に当たってしまいました。
この日はスパルタスロンのツアー最終日でした。
夜の完走パーティーに向け、またバスで移動せねばならなかったのですが、夕方バースデーランから帰ってきてホテルでひろこの顔から石井さんの顔に描き変えている最中に、「バスもう出るよ!」という一報が入り、大慌てで乗り込んで車中でこそこそと石井さんの顔を仕上げたのでした。
あたり一面、真緑色です。
唯一自然なライティングなのは舞台の上のみで、勇者の栄誉を讃えて下界の真緑住人から喝采が浴びせられていました。
完走者はひとりひとり、名を読み上げられて壇上に完走証を受け取りにいきます。
完走したあのランナーこのランナーの晴れやかな笑顔と、いつまで待っても呼ばれないことがわかっている自分との格差を思うと、まるで深海に閉じ込められてしまったようで、酸欠になりそうでした。
でも、名前呼ばれないってあらかじめわかっているだけ、AKBの総選挙より残酷じゃないと思って、気を確かに持ちました。
いただきます。
本当、この緑、なんの演出なんだ?
植物の緑なら癒やされるのに、この緑は青信号の緑と同じ、どぎつい彩度で、信号は「すすめ」なのにわたしだけ進めない、サンガス山のトラウマがフラッシュバックしました。
精神を不穏にさせる色調でした。帰りのバスでは、後ろの座席のランナーから「うお、こっち見てる(うしろの顔が)」と指摘され、つっこんでくださってありがとうございますと思って振り向くと、それはこれまでも幾度かこちらを気にかけてくださっていたお方でした。
わたしが病的な人見知りを発揮してひたすらうつむいて縮こまっていた当初、なんと「後頭部ビジネス見てます」と話しかけてくださったのですが、わたしはあたふたするばかりで、しかしレース中もペースをつくってくださり(ついていけなかった)、大会後は足裏の損傷に苦しむわたしの様子を見て、バンドエイドを与えてくださいました、高価なやつ…。自分じゃ買えないです。
武内さんにも、あきちゃん! 後頭部ビジネス知ってる人いたよ!! と興奮して話していたのですが、彼女にはピンと来ていなかったらしく、このバスで「動画見てます、作り込みすごいです」と言われて初めて実感を持ったようだった。遅いよ。
ふたり手と手を取り合って、うわあああん! と歓喜に震えて、わたしは武内さんとこの感情をやっと共有できたことがうれしかった。
それから、握手してください! と、ふたりで彼に握手を求めたように記憶しているのですが、武内さんによるとそれはわたしの完全なる妄想で、「触れ合いは一切なかったよ」とのことでした。
翌日は、ホテルから移動することなく、セレブみたいにプールサイドで時を過ごしました。
とにかく心身ともにへばってしまっていて…。
わたしの隣のおじさまはクロスワードパズルをされていました。
貧乏性なわたしにとって、旅とは、体力と時間の許す限りせかせか移動しまくるものと相場が決まっていたので、どこにも行けないことがとても口惜しかったのですが、武内さんの「石井さんはゆっくりしたい派の人だと思うよ!」との希望的観測に甘えて、寝そべって気力の回復を待ちました。そして、まだもう一人ここで撮影するつもりでいます。
…次の方は、はい! わだみえさん!
しかしわたしは、今回すごく内省的になれて、そしてこの休息は自分にとってきっと必要な時間でした。
なんて。
自分に甘くてすみません。
石井さんといっしょに過ごせた貴重な時間をわたしは忘れません。
石井さん、どうもありがとうございました。