空港の待合室で後頭部に誰を描くかのくじ引きを実施します。
ビスケットクジの準備が間に合わず、スマホ画面を流す簡単ルーレットにしました。
武内さんの「ストップ!」の声に、現れたピースサインの持ち主は、
ゆうきくん、です!
息子はまだ海外旅行をしたことがないからぜひ、とお母さまがメールを送って下さいました。ゆうきくんの初海外権をありがとうございます!
さあ、美少年を、描きまーす! という段になって、後頭部に顔を描くための大事な油性ペン一式を、預け手荷物の中に忘れてしまったことに気がつきました。
がーん…。
出国審査を既に済ませて搭乗ゲート内にいるため身動きがとれない上、周囲に文具が売っている気配もありません。
唯一手元にあった筆記具、ボールペンでゆうきくんを描画しました。
美少年の儚さが表現できました。存在感が薄いとも言えるけど…。
この世のものならぬ風情のゆうきくんです。
撮影会も着々と催されて、華々しい国際線デビューを飾りました。
描いてくれた武内さん、ありがとう!
北京へ、いざ!
出発です。
今回の旅は、わたしと武内さんとのふたり旅ではなく、若木父も含めた三人旅です。
旅費出資、父!
この北京旅行は、父の、武内さんへの誕生日プレゼントなんです。
今年の父の誕生日に武内さんがお祝いしてくれた、そのお返しです。
わたしもちゃっかり武内さんの誕生日プレゼントに便乗しちゃってすみません。
武内さんありがとう。
たった3時間のフライトでも機内食が出ました。
寝たり食べたり忙しかったです。
北京空港に着きました。
「ようこそ北京へ」と各国の言葉で書かれた垂れ幕が飾ってありました。
前から順に、中国語、英語、ドイツ語、フランス語、ロシア語、イタリア語、そして日本語、アラビア語、韓国語……みたいな感じでした。
入国手続きは長蛇の列。
ゲートを通過してから後ろを振り向くと、一面、人人人でごった返していて、……人人人人。人って漢字を続けて書くと波みたいだな。人波。
…この発見すごく既視感があるのですが、わたしが考えたんだろうか? それともだれかのパクリなのでしょうか。自分以外の皆はもうとっくに知っている常識なら恥ずかしいです。
中国語がペラペラの武内さんは北京は四度目です。なのに全然慣れてるそぶりを見せず、リードしようとしないのがさすがの謙虚さでした。
父が旅行会社に手配してくれた車で市内へ向かいます。
車中でゆうきくんの顔をペンで濃く重ねたら、繊細さが損なわれて、濃さの違いがこんなに雰囲気に影響するものなのかと驚きました。
「顔ってすごい」のか「絵ってすごい」のか、そのどちらもなのか。
昼食は当然のように中華です。すべて旅行会社がアレンジしてくれています。
こんなに何も考えなくていい旅は初めてです。
ごちそうが次々出てきました。
いずれもすごい量です。
満腹でアンニュイなゆうきくん。
腹ごしらえの後は、北京マラソンの大会受付に行きました。
場内に入る前には、小規模空港並みの手荷物検査があって、緊張感が嫌が上にも高まります。直立不動の保安官があちこちで睨みをきかせていました。
後頭部をむき出しにした状態で、初めて大勢の中国人の中に突入する(空港は中国人以外の人もたくさんいるので除外)わたしは、右手右足を同時に出しそうなほど平常心を失っていましたが、皆、受付を済ませるという目的を持っているせいか全く騒ぎにならなかった。拍子抜けしました。
安堵と少しの落胆とをないまぜにして、ゼッケン受取のため自分のエリアを探しました。
わたしのゼッケンは59692なので、515015ー59800の列に並びます。女子はそもそもの参加者が男性に比べて少ないので、スムーズに手続きができました。
協賛企業がアディダスで、アディダスの3本ラインのアーチの下で記念写真撮るサービスとかやってた。
普段ならこのような盛り上がりに乗れずスルーするに違いない写真撮影も、後頭部にゆうきくんがいるおかげで積極的に味わうことができました。
全員不備なくゼッケンを入手し、一路ホテルへ。
とても立派なホテルで、回転ドアが物珍しいわたしは、いつまでもぐるぐるしてなかなかドアから抜けられませんでした。
ごろん。
ゆうきくんの顔が薄れて再び雰囲気が出てきたところで、後頭部を次のお客さんにパスすることに。
大丈夫かなあエピソード十分かなあと不安がるわたしに、武内さんが「大丈夫だよわたしたちだって最初は飛行機乗るだけで一大事だったじゃん、夜行バスだって大冒険だったじゃん、くるちゃん飛行機初めて乗った時とかどうだった?」
わたしの経験を元に自信をつけさせようとしてくれましたが、自分のことを何も覚えていません。
ゆうきくん、北京の空気はそんな悪くなかったよ! 今日はね!!
あと、「中国は親日じゃないから気をつけて。あんまり変なことしたりひとりで歩いたりしないほういいよ」と中国通の友人から脅されて心底びびっていましたが、後頭部にゆうきくんがいたせいか、今のところ「恐るるに足らぬ」でした。
よかった!
ゆうきくん、中国初上陸をともにしてくださってありがとうございました!
謝々!!