後頭部ビジネス

若木くるみの後頭部を千円で販売する「後頭部ビジネス」。
若木の剃りあげた後頭部に、お客さんの似顔絵を描いて旅行にお連れしています。


*旅行券の販売は現在おおっぴらにはしていません。*

2014年10月1日水曜日

ダイスケダイスキ

この日はマラソン大会の前日でした。午後5時から設けられている全体説明会までは自由時間です。

くじ引きで出た、後頭部の同行人はダイスケさん。

くちびるをきゅっとたくしこんだ、はにかむような淡い微笑みを損なわないよう、鼻と口の距離感に注意して描きました。

ヒゲの濃度の調整に気を使いました。

ダイスケさんの送ってくださったお写真の背景はちょうど海のようです。
わたしたちは今日もビーチへ出かけることにしました。

到着早々、地元の方に後頭部について何か問われて、どんなやりとりかはもう忘れてしまったのですがたぶんこの写真を見ると「タバコを吸わないか」だな。
でも、改めて拡大して確認してみたら、タバコではなくボールペンのようでした。

ギリシャへ着いてまもなくの頃、わたしたちはカメラやビデオ、スマホなどの電化製品が盗難に合うのを非常に恐れて、後頭部を騒がれて撮影タイムになっても容易に各自の手から離さなかったのですが、もう今では気がゆるんでじゃんじゃん皆に委ねるようになりました。
ウィンクもワイルドな海の男とツーショット。
数ヶ月前までガラケーを使っていたわたしにとって、スマホは未だに「魔法の板」なのですが、今やそう思ってスマホを崇めている人口は世界でもそう多くはなさそうです。

先進国に在りながら電化製品へのピュアな憧憬を抱き続けているわたしです。

ダイスケさんも、情報化社会からいっとき離れて、ゆったりと潮風に吹かれています。

空は少しずつ曇ってきました。

この、目にやさしい雲が、この涼しさが、明日の大会へ持ちこせればいいのに…。






エーゲ海はつめたくて、正気じゃないほどしょっぱかったです。

拾った木の枝で、「ダイスケ」と書きました。

ビデオを回している武内さんに褒められたくて、ダイスケの「ケ」を「キ」に書き変えて「ダイスキ」にしました。「ダイスケダイスキ!」

見せ場つくれた⁉︎  よかった?  よかった⁉︎  

目を輝かせて武内さんの褒美の言葉を待ちましたが、返ってきたのは「まあまあかな」というつれない反応でした。なんだよ。

でも、そこから、ダイスケと武内あきちゃんのカップルっていう設定にして撮ろうというアイディアが生まれて、ふたりは水をかけあってきゃっきゃきゃっきゃはしゃぎ倒しました。

びっちょびちょなのはそのせいです。

あきちゃんとタイタニックごっこもしました。


そしてわたしの一人二役による、ダイスケさんとのタイタニックも。

ひとりでタイタニックとは、なんと孤独なと思うでしょう?
しかしダイスケさんと背中合わせだと思うと、あまりにも謎めいているために虚しさを覚える余裕はなく、ちゃんと愉快でした。
ほんとは抱っこでつかまえているはずのタイタニックのシーンが、全然支え合っていなくて没個性の共演です。

ほんの、ちいさなできごとに愛は傷ついた歌ってなんだっけ、サボテンの…?  サボテンの…




帰りは自転車をお借りして後頭部のダイスケさんで乗ろうとしたのですがサドルが高すぎて看板にしがみついたまま身動きがとれなくなりました。

ダイスケさんとは、海中の動画も撮ったんです。
たのしみです。
ダイスケさん、いっしょの旅をありがとうございました!