後頭部ビジネス

若木くるみの後頭部を千円で販売する「後頭部ビジネス」。
若木の剃りあげた後頭部に、お客さんの似顔絵を描いて旅行にお連れしています。


*旅行券の販売は現在おおっぴらにはしていません。*

2015年3月24日火曜日

丹羽里枝さん、テオティワカンのピラミッドへ


丹波里枝さんです!
六甲ありがとうございました!
今年は最終日前日に訪れたため申し込むのが遅くなってしまった、とメールをくださいました。こちらこそ遅くなって誠に申し訳ございません…。
いただいたお写真で一昨年の六甲を振り返ってみると、風船の似顔絵が味わい深い目つきをしていて懐かしかったです。

描けました!
ちょっと凛々しくなってしまいましたが、眼鏡の赤がポイントです!
今日の行き先は、世界遺産、古代都市テオティワカンです。

日中は暑くなると聞いていたので目覚まし時計を4時半にセットして臨みました。
髪を剃って顔を描いてもあたりはまだ暗く、日の出は日本よりも遅いように思いました。6時半頃、ようやく薄明るくなってきた朝の中をはりきって出発しました。

水道水が飲めないのは本当に不便だと思いながら、コンビニに寄って飲料水を調達します。

まずは長距離バス乗り場まで地下鉄で移動します。

入り組んだ地下鉄の路線に、乗り換えるべきところをどうやら間違えてしまいました。
朝早くの地下鉄は比較的空いており、治安の悪そうな感じはありません。
だれか助けてと思いながら、わざとおおげさに地図を広げたり、路線図を睨み付けたりしていると、まんまと親切な方がヘルプを申し出てくださいました。
待ってましたー! ありがとうございます!!
正しいルートを教えてくれただけでなく、乗り換え口まで付き添ってくださいました。
わたしたちは「助けてもらう常習犯」です。

北バスターミナルに着きました。
事前にネットで予習しておいた8番窓口に駆けていき、「テオティワカン、テオティワカン!」と連呼します。
往復切符をふたりぶん、確かにゲットできました。
普段ゲームはしないのですが、ひとつ、またひとつミッションをクリアして次のステージへ進んでいく感じが、いかした主人公みたいだと思いました。
「我々は新しいアイテムを手に入れた!」

握りしめた切符を係の方に見せ、身体検査を受け、バスに乗り込みます。
朝8時、1時間に1本のバスがちょうど出るところでした。
しばらく待つ覚悟でいたので思わぬボーナスにガッツポーズです。
「ちょうど間に合う」って人生でかなり上位に置けるよろこびだと思いました。

牛乳パックみたいだね!
武内さんが指差します。
そう言われるまではバスにしか見えなかったバスですが、白地に流れるレトロなカラーの曲線が、本当に牛乳パックのデザインみたいで感心しました。



おもちゃみたいにかわいらしい家々が斜面から滑り落ちてくるようです。
メキシコは色が本当にきれい。見ていて気持ちが良いです。

所要時間は1時間ほどでした。
テオティワカンが終着駅ではないので、寝過ごさないように気をつけました。

まっすぐに伸びたサボテンが冷たい朝の空気にきりりと迎えてくれました。

入場料は500円くらいです。

観光客はまだぽつりぽつりとしかおらず、今日がまだ新しいうちにのんびり遺跡を散策できるのが実に贅沢でした。

階段と平地がインターバルのように続きます。


太陽の強い日差しが影の輪郭をくっきりとかたどります。

リスがいました!
石畳の色に同化していました。

雲ひとつない青空です。
テオティワカンは「神々の都市」という意味なのですが、確かに神々の存在を素直に受け入れられそうな空間でした。




ピラミッドが、だんだん大きく見えてきました。
これがピラミッドか〜!
もっとてっぺんが三角に尖っていると思っていましたが、意外にまるっこいフォルムです。

目をこらすと山頂に人々の姿がありました。
下から見るだけかなあと物足りなく思っていたので、登れるとわかって歓喜しました。

ただ、登れるのはうれしいけどやっぱり階段はきつそうです。

腰を下ろして、一息つきます。

ピラミッドはこの丘の向こう側です。




正規ルートじゃないほうから攻めようと目論んだのですが、立入り禁止の柵が野っぱらを囲っていて、すぐ右隣に見えるピラミッドにアタックできません。

引き返して、もといた石垣からやり直しです。

迷路のような石塀はかくれんぼには持ってこい。
たまに他の観光客とばったり行き合ったりして、ぎこちなく微笑むやりとりがくすぐったかったです。


石が敷き詰められた見事な眺めにほれぼれしました。

ピラミッドまでもうすぐです。

着きました!
太陽のピラミッドに、いざ、見参です。

頂上到着!
ハイチーズ!

登っている間は階段地獄に体力がついて来ず、写真を撮る余裕も撮られる余裕もありませんでしたが、登りきってしまえばこっちのものです。

日本語が聞こえる…。
テオティワカンの入り口からずっと聞き耳を立てていた観光客の方に、英語で話しかけられました。
「日本人です」と言うとびっくりされました。
日本人だとバレないよう、わたしは常に彼女らを気にして無口を心がけていたのです。
でも、後頭部をおもしろがってくださったので、へらへらして一気に陽気な人物に変身しました。
「すごい発想! 芸人さんですか!?」と聞かれた時には、「目指してます!」って元気よく言いそうになりました。

彼女らのうちひとりは仕事をやめて世界一周旅行をしている最中だそうでした。
武内さんはメキシコに来てから初めて会った日本人観光客の存在にとてもよろこんでいましたが、しばらく前から空腹を訴え続けていたので、会話のどさくさに紛れて何か食べ物を持っていないかとか言って今にもたかり出しそうで怖かったです。

普段空腹担当のわたしはというと、武内さんに「は? 我慢しなよ」とつれなく言った手前、自分の空腹を認められず、心も体もひねくれてるなあと思いました。

おなかも空いたことだし(武内さんが!)、ぼちぼち帰ることにしました。

日が高くなるにつれ、人もどんどん増えていきます。
ずいぶん暑くなりました。朝来て正解だと思いました。

「後頭部ステキね、写真をとってもいい?」
そう言ってにっこりカメラを向けてきたパリジェンヌが、去り際に「ナイストゥミートュー」というはずんだ言葉を置いて行ったのが強烈に粋でした。
別れの言葉が「はじめまして」ってちょっと想像していなかったコミュニケーションです。真似したいです。

次に写真を撮られた方もフランスの観光客だったので、思わず「さっきもフランスの人いました!」みたいなことを言うと、へえ、って顔をされた。そりゃそうか。
日本人同士が会う確立よりよっぽどフランス人観光客のほうが多いのだと気づいて恥ずかしくなりました。


もうひとつ、まっすぐ前方に見えるピラミッドに登ります。

こちらが月のピラミッドです。

この階段もきつくて、ヒーコラ言いました。

登りきって振り向いた眺めが素晴らしく、エジプトにしかないと思っていたピラミッドに、今立っていることが不思議でした。
憧れの場所に立てることは満足でもあり、また思いがけず叶ってしまったことに対する少しの寂しさもありました。

帰りのバスは15分置きにあって、乗り込んですぐに眠りに落ちました。

メキシコシティに戻り、とりあえずの空腹をしのごうと路上でマンゴーを買いました。

バスでの寝相が悪かったせいで、里枝さんの顔が薄れてしまっています。
早朝から活発に動いたためにぼーっとしていたのですが、マンゴーがどこまでも甘く瑞々しく、これは天国の食べ物だと思いました。
甘さが濃い!
それでいてしつこくない!
しびれるほどフルーティ!!!

歩き食べしたマンゴーに恍惚となりながら、フリーダカーロ美術館を目指します。
地図が読めずに信号待ちのランナーに道を尋ね、またしても案内してもらいました。
もう、「助けられのプロ」を名乗ろうかと思いました。

かなり歩いて、ようやく、見えました!
フリーダカーロの青い家!
ここだ!!

……。
今日月曜日だ…。

……お休みでした。
背景の色が心情に合い過ぎていました。


気を取り直してお菓子を買って心を落ち着けました。
さっきのマンゴーが忘れられず、マンゴージュースを摂取。
本物には及びませんが美味でした。
里枝さんの次に描くのは里枝さんのご主人です。
ご夫婦で参加されるのは初めてのパターンじゃないでしょうか?
ありがとうございます!

ぐったり疲れたのも合わせて、最高の旅でした!
里枝さん、お疲れさまでした!
ありがとうございました。