マラソン5日目、今日いっしょに旅をしてくれるのは八木谷よしこさんです。
八木谷さんは、一年前にも六甲にお越し下さいました!
そのとき風船に描いた、八木谷さんの似顔絵。
本物の八木谷さん!
後頭部の八木谷さん!
うーん。
寝癖でもしゃもしゃした髪の毛のせいでしょうか。
八木谷さんもうちょっと大人っぽい印象なんだけどなあ、上品でさあ。と言って角度を変えると、今度は面長になり過ぎました。
やっぱり本物には叶いませんね!
今年も似なくてごめんなさい!
ところで、なんと八木谷さんもマラソンをされているそうで、いっしょに走り旅が出来ることがわたしはとてもうれしいです。
「まだまだ初心者」の八木谷さんはこれからハーフ(21km)に挑戦されるとのことで、ここ数日50〜60kmを走っているわたしは、内心「フォッフォッ、遅れてる〜。」とニヤニヤしました。マラソンをしている人には人格者が多いという話もあるけれど、自分にはあてはまりませんでした。残念です。ほんわか笑顔の八木谷さんを後頭部にお連れすることでわたしの性格も直るといいですね。
あと、わたしは頭頂部が薄いんですね! 禿げたらそこに顔を描きます。
朝食バイキングでは栄養のありそうなおかずをちょこちょこ取った後に、好物であるプリンの存在に気づいてショックを受けました。ただの義務感だけで無感動にご飯を食べて、メインのプリンに。
ぷるぷるした黄色いかたまりを、れんげで大きく一匙すくって吸引します。
ゼラチンで固めた何の工夫もない味です。これこれ〜! これよ!!
おいしすぎないので罪悪感が薄れて、おかわりのために3往復しました。
スタート前の日課である記念撮影に、わたしが間に合わないのも日課になってきました。
スタート。
足が上がらないのがもどかしいですがどうにもなりません。
遠く遠くに米粒くらいに見えていた女の姿が次第にふくらんできましたが、人間のシルエットを目視できる状態になってからもなかなか距離を詰められません。
30km過ぎ、抜かす。
あまりにも足が動かないので腕で進もうとして、ロープウェーみたいに、透明の見えない糸を両手で手繰り寄せるように前進。
「バウンドするんじゃない、スライドさせる、前へ前へ、まえまえまえまえ。」
こわい顔で自分に言い聞かせました。
強い海風がごうごう騒いでいます。
今日の気温は20度に届かないほど涼しく、風のおかげで体感気温はさらに下がっているはずなのですが、汗かきのわたしの体はそれでも乾いていて、もっと風吹け! もっと雨来い! もっと冷えろ! とそればかり思っていました。
途中、雨が本格的に降り出した時には「よくやった! やればできるんじゃん!」と空に歓喜しましたが、心配なのは武内さんでした。武内さんは雨天時のマラソンは初めてのはずです。
脂肪がないからすぐに冷えてしまうだろうし、カッパがなくて大丈夫かな。雨だと靴擦れになりやすいとも聞きます。
案じていたのですが、後で聞いてみると「くるみちゃんが雨乞いしてるのずっと見てきてたから、洗脳されてるのか、別に雨いやじゃなかった。ランナーは雨大好きだと思っていたから周りの人がけっこう雨は嫌と言っていて意外だった」とのことでした。
ゴールまでは、あと、もうたったの6km。
でも、わたしはトイレに行きたいです。6kmぐらいなら気合いで我慢できそうだけど、どうしよう! ニャオニャオ! ダービェン!
水を一気飲みしている間に慌ただしく思考を巡らし、悩んだ末にやはりトイレに寄ることに決めました。
今大会中、トイレに行くのはこれが初めてです。そういや腰を下ろすのも初めてです。
くつろげました。
偏りのある中国語をたくさん覚えました。
塩はイェンバー。
水はシュイ。
怖いはパ。
笑うはシャオ。
走るがパオ。
「怖い」と「笑う」を合わせたら、「走る」になるんですね。
うまいこと言いたかったけど、言ってる本人にまだ「怖+笑=走」という認識があまりありません。これからこの路線を意識して走って、計算式を証明したいです。
ゴール!
しましたがこの日のゴール写真は入手できず、八木谷さんすみません…。
さらなる悲報をお知らせすると、この日わたしは死守していた2位の座からついに陥落したのでした。
ゴールしたら昨日まで後ろにいた女子の姿が既にあって仰天。レース中一回も見なかった! 侮っていたので茫然としました。
残りあと1日だし、よっぽど明日ブレーキしない限り、総合成績では2位になれるでしょうが、1位どころか、全日2位すら落とすなんて…。
不甲斐なさに唇を噛みしめながら、患部を氷で冷やしました。
好成績を残せているならツートーンの手元も勲章のように誇らしく感じるのかもしれませんが、色ムラの出来てしまった失敗パンのような気持ちです。
アイシングをしながらしょぼくれて武内さんの帰りを待ちました。
昨日リンダと同じくらいのタイムだった武内さんの姿が、今日はなかなか見えません。
ほんの小さなトラブルが原因でリタイアになってしまったりします。
アキコはみんなといるから大丈夫。スタッフの方にそう教えていただいても、不安は消えません。
八木谷さんのお顔もだんだんおぼろげになってきました。
わたしは魔法がとけてしまいそうなヒロインの気持ちです。
消えちゃう前に写真を撮らなくちゃ!
女子くさいフォーム!
しかしあきちゃんではありませんでした。
斜めがけの指定かばんには、ブリキのお弁当箱を入れたい感じです。
あきちゃんおかえりー!
八木谷さんのゴールも多分こんなだったと思います!
イメージで合成してください、よろしくお願いしますね!
ずるいー! ひったくってわたしも飲み食いしました。
ちなみに自分のゴール時にはお刺身の差し入れがあったのですが、それについては触れないでおくことにしました。
今日も制限時間いっぱいでゴールして、満身創痍の武内さんです。
一足ごとにタメも効いていて、高尚な伝統芸能の類いに、見ようと思えば見えないこともなかった。
体が痛くてぐったりして、些細なことでクサクサしがちでしたが、裏方でのご苦労があってこそ、わたしたちは好き勝手走らせてもらえていたのでした。
明日は、笑顔でゴールできるといいなあと思いました。
感謝感謝感謝感謝。
薄れつつある後頭部の八木谷さんが、「感謝の念を忘れていやしまいか」と身を削りながら諭してくださっているような気がしました。献身的!
意気込んで食べたら、メンマでした。メンマにマヨネーズでした。
いろんな意味でしょっぱかったです。
いただきます、ごちそうさまでした!
良い夢が見られそうです。
口元を失敗……ペンが悪かったんです。