後頭部ビジネス

若木くるみの後頭部を千円で販売する「後頭部ビジネス」。
若木の剃りあげた後頭部に、お客さんの似顔絵を描いて旅行にお連れしています。


*旅行券の販売は現在おおっぴらにはしていません。*

2015年3月29日日曜日

倉田倫江さん、砂漠に立つ


倉田倫江さんです。

福山でお会いしたのですが、以前倫江さんは岡本太郎美術館でわたしの後頭部作品をご覧になったことがあるそうで、思いがけない偶然に驚きました。

後日、倫江さんにメキシコを旅することを告げると、『メキシコは岡本太郎さんの壁画も見つかった所だし、私とくるみさんを太郎さんが繋げてくれた気がする』と素晴らしく気の利いたコメントをくださいました。
デザイナーの倫江さんは、『良かったら私の作った服を着てほしい!』とも申し出てくださって、そんなの超着たいに決まっているけど時間がなくて叶わず、無念でならなかったです。

せめて『カラフルな服着てガイコツと一緒に写真撮ってほしい』という命題を果たそうと、出国前にあわててワードローブを漁ったのですが…。

手持ちの一番カラフルな洋服がこれでした。
なんか、こういうことじゃないよな…と自分でも腑に落ちません。
イメージはきっともっとフォークロアな感じでブラウスに色とりどりの刺繍がされているような、原色の明るくて華やかさですよね……?
わたしのタンスに並んでいるのは、無彩色か、漂白剤の使い過ぎで色褪せたようなぼんやりした服ばっかりでした。

しかしアプリの力を借りて、ちょっとカラフルなTシャツに加工しました!
先生や学生の方たちと、ワゴン車を借りてメヒカリ観光に行きました。

ガソリンスタンドのコンビニです。

パティが、メキシコの駄菓子を買ってくれました。

チューブを下から押し出すと穴から中身がにゅるっと出てくるので、それをちゅーちゅー吸って味わいます。
見た目からはもののけ姫のうにょうにょとか、ムーミンのにょろにょろとか、そういう似通った音感のキャラクターが浮かんできました。
味は甘酸っぱくて、梅肉に似ていました。

セサル先生はドライブのお供にポテトチップスも購入されていたのですが、バリッと包装紙を開封するとポテチに激辛のチリソースをぶちこんでいました。べとべとするから手が汚れて大変そうだし、時間が経ったら湿気でパリパリじゃなくなりそう。
チリソースはこちらでは必需品だそうで、確かにポテチのためにコンビニでこんなにでかいボトルを買う所が本気でした。
ちなみになんと果物にも辛い赤いソースをかけて売られているそうです。
もう舌の感覚が麻痺しており、中毒なんだと言っていました。

この峠を越えると、あちらはティファナという大きな都市です。
ティファナ?
なんかどっかで聞いたことあるぞと思ったら、数年前に読んだ海外ミステリに出てきた地名でした。麻薬カルテルの拠点だったはずです。物凄く面白い本だったんです。犬の力。そういえばメキシコが舞台だった! 安全地帯からめくっていた本の世界に、こんなふうに近づけるとは思ってもいませんでした。


我々の目的地はティファナではなく、その途中にある砂漠です。
パバロッティが最後のライブを行った場所でもあるそうです。

国道を外れ、道なき道っていうか道だらけっていうか、どこまでも平らな地平をずんずん車が進みます。
砂漠って言うけど、どうせしょぼい空き地なんでしょ? そう思っていた自分の想像を、簡単に超えていました。
砂漠行きたいってずっと思っていたんだよ!
鳥取砂丘行きたいって10年以上思ってるし!!
興奮して武内さんを揺さぶりました。




360度、まるっと全部が大自然!

雲ひとつない空は、嘘みたいに濃い青です。
灼熱の大地に仁王立ちして、息をのみました。
比喩ではありません。喉が乾いて仕方なかったので、潤いを求めて何度も息(っていうか唾)を飲みこんだのでした。
めちゃくちゃ暑いのに、空気が乾いているせいで汗は出てこず意外にも快適です。

サンダルを脱いで、裸足でそっと大地に触れてみました。

ぐっと体重をかけると、カサっというわずかな抵抗ののちに数ミリ地面が沈みました。

地面には足形がしっかり記録されていて、輪郭の迷いのなさが普通の土とは明らかにちがう水分量でした。メロンパンの皮みたいな見た目と感触で、この地面全部メロンパンだったら夢の国だなと思いました。(読者のご指摘追加:メロンパンというよりダックワーズ)

先輩が、拾った弾丸を見せてくれました。
今は冬ですが、本気で暑い夏には、よくこの砂漠でガイコツが見つかるのだそうです。
遊び半分で入って方向感覚を失い干涸びる人もいるし、マフィアが死体の始末をするのにも好都合なんだそうです。「捨て放題」だって。

先生の感情を込めない淡々とした語り口が、かえってメキシコの恐ろしさを増幅させていました。
メキシコの殺人の数と日本の自殺者の数はほぼ同じだそうですが、どちらが健全なのかわたしにはわかりません。

ここは、キャラとかじゃなくて文字通りのガイコツがいる場所だったんですね。
わたしたちは国道からさほど遠くない場所で遊んだのですが、もっともっと奥まで行くと、本当に見なくていいものがたくさんあるのだそうです。


倫江さんが言っていたようにガイコツと一緒に写真は撮れなかったけど、人間も皮膚を取ってしまえばガイコツっちゃガイコツなんだし、いっかな! とすごい笑顔で考えました。

植物発見。

枯れているのか、ばっちり生きていて絶好調なのかわからない葉がもしゃもしゃしていました。繊細な薄い緑が目に心地よかったです。


見晴らしが良すぎて、今尿意もしくは便意を催したら大事故になるなと思って緊張しました。


地面はタイヤ痕によって抽象画のような柄が出来ていたり、隆起して脳みそのようになったりと多彩な表情をしています。いつまで見ていても飽きません。

どさっと寝そべると電気代ゼロの自然のホットカーペットを享受できました。
ただし温度調整は利かず。熱すぎでした。

立ち位置を決めて、


カメラのタイマーをセットして、

おらよっ!

地面のクッション性によって着地はやさしく受け止めてもらえましたが、踏み切るのに体力が必要でした。
いっぱい跳びました。
喉が乾いた皆、わたしたちのジャンプを待って、帰りました。

中華レストランで昼食です。
メヒカリの歴史は比較的新しく、土地を拓いたのは主に中国人だったので、メキシコでありながらここの郷土料理は中華なんだとか。

チリソースと同様、何にでもたっぷりライムをかけるのもメキシコの特徴です。
レモネードの甘さが喉をうれしかったです。

オイリーな炒め物にはクシ切りにした皮付きのオレンジがごろごろ入っていました。
こってりが強すぎて、オレンジごときでは全然爽やかになっていなかった。気休めって感じでした。

ヤマサのソイソースが日本人としては誇らしいです。

おなかいっぱいでおかずがたくさん余ったので、お店の方にタッパーに入れてもらいました。
みんなで協議して、分けっこして帰りました。

メヒカリ空港です。
ほんの短い間でしたが濃い滞在になりました。

夕方の便でメキシコシティへ戻ります。

メヒカリありがとう!



光が地平を染めていく、魔法みたいな色の変化に、言葉を失ってただただ見とれました。

神は有能だ…、と、「お前に言われたくない」と神が怒りそうなことを思いました。
なんて美しいんだ。
(読者のご指摘:神は有能なのではなく万能)

夜景もなかなかです。

時差のせいもあり、メキシコシティに着いたのはもう深夜でした。
長旅になりました。
ファッションやメキシコ文化に触れたりできず自然がメインになってしまいましたが、倫江さんのご要望の解釈をはき違えながら、忘れたくない景色がたくさんまぶたに刻めました。
倫江さん、長時間お疲れさまでした!
ありがとうございました!!