後頭部ビジネス

若木くるみの後頭部を千円で販売する「後頭部ビジネス」。
若木の剃りあげた後頭部に、お客さんの似顔絵を描いて旅行にお連れしています。


*旅行券の販売は現在おおっぴらにはしていません。*

2015年4月12日日曜日

れいらさん、バラガン邸見学

れいらさん、いちばん右です。

れいらさんは先輩の奥さんです。
伊丹空港を出発する前夜、武内さんとふたりで先輩宅にお邪魔させていただいたのですが、れいらさんはとてもやさしくて美しくて、女神でした。

先輩によろこんでもらおうと思ってれいらさんを描いたのですが、本物はもっと美人やと本気でダメ出しされて、いやいや。けっこう上出来ですけどと思いました。
本物のれいらちゃんが来てくれたほうがうれしいわーともおっしゃっていて、そりゃあそうでしょうなあ。
でもそういうことを言えるのはすごくいいご主人だなあと思いました。


明日はメキシコを去る日です。
恐らくこれが最後のオレンジジュースを、大事に飲み干しました。

地下鉄は止まっていました。
あとからあとから人が押し寄せて、ホームにはすごい厚みの人垣が出来上がりました。
背後は大勢の人でかためられているので戻るに戻れず、待つことしかできません。
バラガン邸の予約の10時半に間に合うよう、かなり早めに家は出たのですが、何が起きているかがわからないので不安でなりません。

やっと来た電車は既にぎゅうぎゅう詰めで、どう見ても車内に入れる余地はなく、何本か電車を見送りました。
停車位置も日本のようにぴったりとは決まっていないので、自分の待っている目の前でドアが開いたなら大当たりです。
ようやくホームの最前線まで繰り上がって、斜め前で開いたドアから死にものぐるいで乗り込むことができました。武内さんと結束して、どちらかがホームに取り残されないよう、竜巻のように回転しながら体をねじ入れました。

さて、問題は降りる時です。
人、人、人に圧迫されて、単語帳を開くのはもちろん、身じろぎすらも不可能です。
降りるってなんて言えばいいんだろう。
オフ? アウト?
停車駅の数に集中しながら考えていると、駅でもお店でもよく見る、「出口」を指す案内表示を思い出しました。
SALIDA。
そろそろ電車が、コンスティなんとか駅に到着します。
「サリダ!!」
おなかの底から叫びました。
カードゲームの「ダウト!」みたいな絶叫が車内に響き渡ると、くすくす笑いがこぼれ、皆が身をよじって我々を出口に送り込んでくれました。

朝からすごい達成感でした。

ルイスバラガン邸見学にチャレンジするのはこれで3度目なので、さすがに道を覚えました。
バラガン邸の前の道路には清掃車が止まっていて、住民の方々がゴミ袋を放りこんでいます。バラガン邸だからと言って、特別扱いされていない感じがよかったです。

予約の時間までまだ少し間があったので、庭歩きをしました。

石膏像がありました。

タイで、『首のない仏像で遊ばないで』と禁止されていた遊びをしました。

この石膏像がキリストだったら罰が当たるのでしょうが、この筋肉隆々っぷりはキリストじゃなくてただのイケメンだろう、そしてイケメンの9割はバカって言うし、多分ふざけても大丈夫だと思いました。

マリンブルーがパチッと決まっていて、気持ちの良い庭でした。


壁には精緻な絵が浮かび上がっていました。


前回、前々回に来た時には、あまりにもそっけないバラガン邸の外観に拍子抜けしていたのですが、今朝、壁をキャンバスにした雄大なこの影絵を見て、「殺風景な建築」という考えを改めました。


いよいよオープンです。

館内は撮影禁止。
ガイドのお姉さんが、英語の解説つきでバラガン邸を案内してくれました。

2部屋ほど案内してもらったところで、お姉さんが、「ところでそれを写真にとってもいいかしら?」とれいらさんにカメラを向けました。
もちろんです! どうぞどうぞ!
そう言ってからすかさず、わたしたちもいっしょにぜひ! とお願い。
お姉さんはふたつ返事でにっこりです。

本来は撮影禁止の書斎で、特別扱いの恩恵に預かりました〜。
れいらさんありがとうございます!!

バラガン邸は、予想よりもずっと複雑な構造をしていて、ちょっとした迷路のようでした。

変わった間取り、ダミーの階段、色鮮やかな黄色、ルオーの絵画、アフリカのお面、趣味の馬グッズ、さりげなく上質な家具、高い天井、ひとつもない照明、窓から差し込む光の十字架、寝室にまつわるブラックなトーク。

バラガンバラガンって、予約はとれないわ入場料は高いわ、なんなのよと思っていましたが、さすがの充実度でした。
武内さんも、「う〜む」と唸っています。
「こういう家なら住んであげてもいいよ。」は、武内さんの最大限の賛辞なのでしょうが、なんでそんな強気なんだとわたしは耳を疑いました。バラガンだって、風呂無しトイレ和式家賃3万のおまえに認められても、困ると思うよ。

建築も調度品も、もちろん素晴らしかったのですが、同時に英会話教室も出来て楽しめました。

階段を上がると、屋上に出られました。
ものすごい光量に目がくらみました。
英語に集中した疲労感が、いっぺんにほどけていくようでした。

屋上は撮影OKです。
皆、解き放たれたようにシャッターを押しまくっています。





立ち位置によって、白い柱とオレンジの壁のラインが一直線に揃って見えます。
雲ひとつない空も壁面のように平板で、自然と建物がトリックアートの世界に参入したみたいでした。



オレンジの壁の向こうには、ピンク色があふれています。



この光、この空、この緑があってこそのピンクです。
ピンクなのに甘くないのは、妙な凹凸がないからでしょうか。
不思議とすがすがしい発色でした。





たくさん説明をしてもらったけど忘れてしまいました。
途中参加の金髪女性の背中のタトゥー「30」が、どういう意思の表れなのか気になりました。
最後に、ガイドのお姉さんが、後頭部のれいらさんもろともハグをしてくださいました。フェイスブックにアップするね! と言ってくれてうれしかったです。

そのまま浮かれ気分で歩いて、ついに警察とも仲良く写真に収まってしまいました。


ドキドキしましたが、人の良さそうな警察の方々でよかったです。
それにしても、警察を人が良いか悪いかで考えているところが新鮮でした。


本日2度目のオレンジジュース。
これでいよいよ飲み納めです。

れいらさんがパンが好きとおっしゃっていたことを思い出して、おしゃれぶってすかしたパン屋に入りました。
そしたら、外から見ているよりも中はずっとストイックな雰囲気で、パンの種類がとにかく多く、値段もこわくなかったし、真面目なパン屋だと思いました。


焼きたてのおいしい匂いが立ちこめる、外のテーブルで食べました。
サクサクパリパリフワフワモチモチ最高、でした。
あと匂いが嗅ぎ放題で幸せでした。

ルイスバラガン邸、とってもよかったです。
バラガンのことを何も知らなくても、素晴らしいのはわかりました。

予約をしなくても場合によっては見学可能だそうですが、予約のメールをしても返信なかったし、がんばって電話をするのがおすすめです。
一か八かで行って、わたしたちは結局三までかかって見られましたが、運が良ければ一で見られるはずです。
おすすめです。

れいらさん、ありがとうございました!