中川原さん、ルチャリブレ

中川原さんです。
後頭部ビジネスへの参加を表明してくれた時に、念のため「でも顔写真とか載るんだよ！」と忠告すると、「何億って人がブログ見てるなら考える」と言われました。
問題なしでした。
読者３０人です。

描けました。

にやついてる！

コヨアカン通りから目的の本屋さんまで、逆方向に進んだために２時間歩き通すことになりました。
バスに乗りゃあいいのですが、ドアが開いたまま走っていたり、お客さんが乗り込んでいる最中にもゆっくり動き続けたりするバスを見て、臆病になってしまいました。


歩いて歩いて、３駅分パスして、ガンジーという大きな本屋さんに着きました。

武内さんが、友人に頼まれているマヌエルポンセの楽譜がないか、店員さんに尋ねています。
結果はノーで、どの本も在庫切れでした。
現代はデータベースですべて管理されているのだから、ないと言ったらないんだとわかってはいても、探さずにはいられません。ポンセに時間をどれだけ割いたか考えて、いらだちが募りました。

怒りの矛先は武内さんに向けるしかなく、マヌエルポンセってなんだよ！　理不尽な炎を燃やしました。

メルロポンティならあるけど。ポンティでいいじゃん。

アマゾンがどれだけ有能かを改めて実感しました。
ネットで買うのがいくら味気ないとしても、便利なほうが絶対いいとわたしは思いました。
ただ、後頭部の中川原さんはたぶん書店好きだという点だけが救いでした。
ポンセへの未練を断ち切ってからは、本屋さん特有の紙の匂いを愛でることができました。

ポンセショックから立ち直って、地下鉄に乗りました。

日没が迫る中、バルデラス駅で降りて、シウダデラ市場までダッシュしました。
バルデラスもシウダデラも、唱えたら魔法の扉が開きそうな語感だなと思いました。

だいたい５時〜６時で閉店すると聞いていましたが、よかった、まだ半数以上のお店が開いています。


探していた色とりどりの楊枝を見つけました。

なんでこんなのが欲しいんだと言われそうですが、まあやさんの手作りサンドに突き刺さっていた鳥とねこちゃんに一目惚れして、絶えて久しい女子力が目覚めたのです。


わたしも小麦粉を焼いたやつにこうやってピックを立たせて色々ごまかすんだ！！
味より見た目！
虚飾万歳！
（まあやさんのトルティーヤは味もおいしかったです。）

一心不乱に選びとっている様子を、お店の方に激写されていました。

後頭部のおかげか、ちょっと値段をおまけしてくれました。
中川原さんありがとうございます。
もし女子力高めたければピックあげます。


ギター工房を見学させてもらえました。

もしかして！　と思って、マヌエルポンセの楽譜がないか、聞いてみました。

なかった。

武内さんが白目になっていました。

お店の方がとても親切で、わたしは「この人のつくるギターからはやさしい音がしそうだ」などと、甘っちょろいことを思いました。

シウダデラ市場にはメキシコ中の州から来た個人商店が集まっていて、あらゆるタイプのお土産を一挙に捜索できます。

後頭部に沸き立つ人もいれば、くすりとも笑わない人もいますが、がめつい客引きはないので、ゆっくりお店を回れます。

刺繍のクッションカバーに物欲が動きましたが、いや…今じゃない……と思って、意を決して去りました。
「今」は永遠に来ないことを、お店の方も自分もしっかり気づいているところが寂しかったです。

刺繍のクッションカバーの代わりにアイスを買いました。

女子力敗北の瞬間でした。

先輩たちと待ち合わせていた、アレナ•メヒコに着きました。

ルチャリブレと呼ばれる、メキシコのプロレスが見られるホールです。

飛行機並みの厳しい荷物検査があって、ペットボトルの液体はその場で捨て、カメラは窓口に預けました。

「カメラの受けわたし所」。

本当に返してもらえるのか若干不安になる、おどろおどろしいフォントでした。

来ました！　アレナメヒコ！


生まれて初めて見るプロレスです。

水着の美女がくねくねしながらレスラーの登場を見守っていました。


レスラーより美女のほうについ注目してしまうわたしは、ルチャリブレよりショーパブのほうが合ってるんだろうなあとかたじけなく思いました。


テレビでもあまり見たことのないプロレスの、いきなり本場にいることが自分でも驚きです。
ルチャリブレ会場の周辺は危険だから決してふたりで行かないようにと先輩に警告されていたのですが、こんな時でないときっと一生行けないからと頼み込んで、無理にお願いして来たのでした。

本当にリングがあること、周囲のヤジ、絶叫のアナウンス、すべてが初体験でドキドキします。


マスクまで用意している準備万端の先輩が、隣で解説をしてくれました。

最初に出てくるのはこわっぱどもで、落語の前座みたいに、場をあたためて去っていくそうです。

マスクをしている人が善人で、素顔のほうが悪人なんだっけな？
でもマスクをしている悪人もいるとかで、善悪の見分け方が難しいです。
４人体制での試合でした。


確かに、なんだかひょろい人たちがいちゃいちゃやっているだけで、善人悪人の対決というより、みんな仲良さそうでいいなあと微笑ましくなる試合です。

しかし、第二幕、第三幕と進むうちに、素人目にもわかるほど、レスラーの迫力が格段に増してきました。

全員、体つきが異様にガチムチです。

肉と肉のぶつかりあう重い音、とびちる汗、男たちの野太い咆哮が、リングいっぱいにこだましていました。

日本人レスラーも登場しました。

「ミヤザキさあん！」

皆で応援しましたが、どうもミヤザキさんは卑怯なキャラらしく、「あかん素直に応援できひん」と先輩が葛藤に苦しんでいました。

すごーい……と思って見てはいるのですが、わたしはまぶたがだんだん重くなってきました。
あんなに来たかったルチャリブレなのに、眠気が勝ってしまいます。
マッチョな男をどうありがたがっていいのかわかりません。

寝たり起きたりをとろとろと気持ちよく繰り返していると、パアン！　とえげつないタックルが入って、青いレスラーが担架で運ばれていきました。

パッと目が覚めました。
この箱庭の中で起こっているのは、どうせ「プロレス」なんだ、ショーなんだとどこかで侮っていたのですが、それでも闘っているのは本物の人間なんだということを思い出しました。

これらはすべて役者同士のじゃれ合いだと思っていたのですが、闘いには本物の痛みを伴うこと、時として命を懸けての勝負になることが不意に理解できて、寝てる場合じゃありませんでした。

リングの周りではすごい嬌声が飛び交っていましたが、平日だったせいか場内には空席が目立っていたし、プロレスってどことなく影のあるスポーツだなと思いました。

性格的につい悪役レスラーの哀しみのほうに興味が湧きましたが、それなら、もっと詳しくそれぞれのキャラクターの内面を知らないといけないんだろうなあと思いました。

自分の趣味趣向を考えさせられた、プロレス初体験でした。

レスラーの皆さんは試合が終わってからもファンサービスに務めておられるのが、涙ぐましいお姿でした。

いっしょに写真撮ってもらおう…と歩み出ましたが、もじもじしている間にレスラーがひっこんでしまいました。

代わって観客の子どもレスラーたちとハイチーズ。

ルチャリブレの良い記念になりました。

入ってくる時は気づきませんでしたが、頭上の壁画もいい感じでした。

武内さんのルチャリブレを見た感想は、「くるみちゃんやっぱり寝ちゃったな」だそうです。

失礼な途中でちゃんと起きたよ。
たのしかったです。

おいしいメキシコ料理のお店に行きました。

ライムをビールに絞るのがメキシコ流です。
メキシコの乾杯は「サルー！」です。

サルー！
野菜たくさんのスープで、初めてのプロレスにご乱心だった精神が癒されました。

深夜のコンビニで、羽目を外してお菓子を買い食いしました。

メキシコ最後の夜です。

エアメールを書きました。

いよいよ明日、日本に帰ります。
中川原さんありがとうございました！
お疲れさまでした！