後頭部ビジネス

若木くるみの後頭部を千円で販売する「後頭部ビジネス」。
若木の剃りあげた後頭部に、お客さんの似顔絵を描いて旅行にお連れしています。


*旅行券の販売は現在おおっぴらにはしていません。*

2015年4月4日土曜日

カフェグレイスの寺岡さん、カフェ探し




福山で、作家の植田さんと行ったソファのあるカフェが素晴らしく居心地が良くて、また明くる日もいっしょに、同じお店に行ったのでした。
カフェグレイス。
店内が果てしなくかわいいだけでなく、パフェも紅茶もとてもおいしいお店でした。
後頭部に驚いたアルバイトの女の子がおずおずと写真を撮っていかれたことがきっかけでお話がはずみ、一家でお店を切り盛りされている中の、お母さんが旅券を買ってくださいました。

カフェグレイスカフェグレイス!
放っとくと、買い食いや歩き食べに終始して食をないがしろにしてしまう我々ですが、素敵なカフェに行くのが今回の寺岡さんの旅のテーマです。


日が落ちかけたサンクリストバルは、標高が高いせいもあるのかだんだん肌寒くなってきました。


現在地は、山に囲まれた町の、すみっこのほうです。
中心部へと見当をつけて歩き出しました。

歩いていると唐突に、大きな板チョコが目に入りました。
自分が意地汚いせいで木材がチョコに見えているのかとも思いましたが、偶然だとしたら似過ぎています。でも、チョコに模したお菓子の家ごっこにしては周りの環境が全然ファンタジーじゃないし、何事だったのかいまだにわかりません。


しかしカカオが名産という情報をゲットしたので、お土産にチョコレートを買うことにしました。

何人かに道を聞いて、明るいうちに観光エリアに復帰できました。
ひと気の少ない通りが心細かったので、町の賑わいにほっとしました。

ちょっとつまみ食い、とバナナチップスを買いました。
おつりをちょろまかされたと思ったら間違えていたのは自分のほうで、赤面しました。




朝一番にはずらっと整列を決めていた鶏も、夕方には数えられるほどに減っています。
はじめはただただ逆さになった鶏のビジュアルに圧倒されていたので、見せ物じゃなくて本当に売り物だったんだなあと初めて理解できました。


片付けの始まり出した市場で、喉を潤す果物を探しましたが、10個、20個のまとめ売りしかなく、断念。


広場を抜けたところにジュースの屋台を発見して、思わず歓声をあげて駆け寄りました。
一口目も二口目も十口目もそれはそれは感動的なおいしさです。
ひとつのジュースを武内さんといっしょに飲むはずだったのですが、これはあかんと思って、引き返してもうひとつ買いました。


お兄さんが、半切りにしたオレンジを次々手際よく絞り機でプレスして、あっというまにフレッシュジュースの出来上がりです。
果物に興味のないはずの武内さんが帰国後の日本でもオレンジジュースを飲んでいるので、どうしたの? といぶかしむと、今回の旅で好きになったそうでした。

ハンモックもいいなーと思いましたが、日本に持ち帰って自宅で再現するには無理があります。果肉入りのちょっと高いオレンジジュースを飲むくらいが限界です。





それでも、ハンモックや絨毯や革製品にそっと視線を走らせるのは、たとえ買えないとわかってはいても心の浮き立つものでした。


とかやっているうちにわたしは刺繍のバッグが欲しくて本気で迷い出すのでしたが、武内さんに釘を刺されて買い物熱が冷却されました。


お面グッズの中にはピエロも何個か混じっていたのですが、白塗りじゃないピエロは赤い鼻を除けばただのギャルの化粧みたいで、人間味が強すぎました。
お面も欲しかったけれど怪しげな店内に踏み込む勇気はなく、こうしてびっしり揃っているから見応えがあるのだ、単体では魅力が半減するに違いないと言い聞かせました。


教会のカラーリングがレトロです。
夕暮れの、重たい鼠色の空にその愛らしさが引き立ちました。


すっかり暗くなりました。


カフェを探して、2時間近くも歩いたでしょうか。
大通りのどこかに入ればいいものを、ちょっと離れた通りをうろついたせいで迷子になりました。
外灯の下、地図を見つめて立ちすくんでいると、「あれ!?」という日本語が聞こえます。ゲストハウスで会った、グアテマラ帰りのカップルでした。
わー! 素敵なカフェ、ご存知ないですか!?
挨拶もそこそこにカフェ情報を求めてから、てめえらみたいなホームレス風情が何カフェとか言ってんだよと思われたらどうしようと思って、「あっわたしたちは全然、カフェとか普段入らないんですけど後頭部の寺岡さんがカフェを経営されている方でそれでぜひカフェに行きたいと思ってカフェカフェ」とすごい勢いでバリアを張りました。
補足も含めてますます不審な言動にもグアテマラ男女は動じずに、やさしく「カフェは大通りだよ!」と3つも紹介して下さいました。




大通りに戻ると、探していたチョコレートやさんもあっけなく見つかって拍子抜け。
お土産も買えました。


お店の外までカカオのいいにおいが漂っていて、いつまでもたむろっていたい場所でした。このイケメンはチョコレートやさんの店員だと思うのですが、胸のバッジが私物だとしたらただの通行人です。でも、今時自由意志で胸にバッジ付けてる人っているかな。


大通りを行きつ戻りつして、このお店に決めました。
別に寺岡さんを持ち上げたくて言うわけじゃないけど、グレイスよりかわいいお店は大通りにはなかったです!


シックな店内はお客さんの雰囲気も優雅で、わたしの後頭部にもがちゃがちゃ笑わず、口角をぴくっと上げるぐらいの落ち着いたリアクションでした。


とりあえずカフェに入ったぞ! 
ミッション成功に糸の切れた私たちは、弛緩した動作でシナモンロールを口に運びました。
おしゃれカフェなのについ、シナモンロールとかいうおなかに溜まりそうなものを選んでしまう自分がかなしかったです。それから、ココアはどういうわけか薬草の味がして、もっとデブのよろこぶ味を期待していたのに健康志向でむかつきました。自分とおしゃれとの反りの悪さを実感しました。


目に入る景色はおしゃれだとうれしいけど、腹に入れるのはおしゃれじゃなくていいと思いました。


お城の荘厳な輝きを前に、「道を教えてくれたグアテマラの男女(日本人)は結婚しているかどうか」と、他人のプライバシーに首をつっこむ卑俗な討論をしながら帰りました。


もう我々の内面がおしゃれとはほど遠いもんね、と開き直った気持ちでした。



ゲストハウスに着いて、おしゃれキッチンの前でハイチーズ。


ロビーにはグアテマラ男女もいて、皆で送り出してくれました。
後頭部のアイディアは宿泊客にも軒並み好評で、パチパチ撮影をしてもらいました。



「結婚はせず、形にとらわれない関係性っつって、お互いのことをパートナーって呼んでいる」と、勝手なイメージを与えてグアテマラ男女についての結論を出したのですが、当然ご本人たちには聞けませんでした。
わたしは、カフェグレイスのご家族のみなさんの笑顔に憧れます!
メキシコのカフェも良かったですが、わたしにとってのベストオブカフェはグレイスだな、という超幸せな出来レースで旅を締めたいと思います。
寺岡さん、本当にありがとうございました!
ごちそうさまでした。