後頭部ビジネス

若木くるみの後頭部を千円で販売する「後頭部ビジネス」。
若木の剃りあげた後頭部に、お客さんの似顔絵を描いて旅行にお連れしています。


*旅行券の販売は現在おおっぴらにはしていません。*

2015年4月8日水曜日

西尾先生とトラコルーラの日曜市へ


西尾佳展さん。
「地元の田舎で細々やっている小学校教員」の方です。
こんな生真面目そうな方も後頭部ビジネスに参加してくださるんだなあと、うれしくも不思議に思いました。
新学期ですね!  お疲れさまです。

描けました!
おはようございます。
朝からシャキッと凛々しいです。

昨日わたしたちが泊まったのは、ドアの代わりに鉄格子のはまっている部屋でした。
激安だったし、他に泊まる当てもないし、なんか鉄格子のアンティーク感がおしゃれだし、という浅はかな第一印象でついここにしてしまったのですが、夜寝てみると、仕切りのないことが非常に不安になりました。

このチェックのベッドの背後が鉄格子です。ほぼ外です。
格子の隙間から吹き矢で射られたらどうしようとか、っていうか銃撃も可能じゃんとか、プロの雇われ猿が貴重品を漁りに部屋に入って来るかもとか、ひどい胸騒ぎがしました。

猿(イメージ)

こわいのでチェックのベッドは放置して、奥のシマシマのベッドにふたりで寝ました。
鉄格子部屋は音が筒抜けなのも難点で、酒盛りをする野郎等の嬌声が深夜までうるさく響いていましたが、こっちも負けるまいと意地になって熟睡しました。

まだ暗い早朝、セットしておいた目覚ましを止めて二度寝していると、夢うつつで日本のラジオが聞こえたように思いました。

……なんか日本語みたいに聞こえるね。

寝ぼけて武内さんに言ってから、ハッと飛び起きました。

…もしかして!  先輩じゃない?!

鉄格子から覗くと、すぐ目の前のロビーで先輩と日本人の若者とが、声を抑えて会話していました。
おおおお、ご無事で!!
早い到着に驚きでした。
鉄格子の部屋だったから、話し声に気づけました。
携帯なしで合流なんて不可能だと諦めていたわたしはこっそり感動しました。

先輩と、さっきたまたま会ったという日本の旅人も道連れにして、皆でいっしょに観光へ出かけました。

昨日下見しておいたバスターミナルまで歩きました。

わたしの知っている日本のバスのように、つるっとしていない、でこぼこと味のある外観のバスです。

車内も個性的なカラーリングが印象的な、味のあるしつらえでした。
時折バウンドする、アクティブな走りもまた味わいがあって、味って便利な言葉ですね。

到着したバスターミナルの壁には、でかでかと「ホープ」と書かれてありました。
グラフティなんて不良文化だと決めつけていたのですが、オレンジ色の丸文字に微笑みを誘われました。
左上に小さく記された控えめな「ホープ」もいじらしく、「希望あれ、希望あれ。」わたしも心の中で、大きく小さく思いました。

「これから西尾先生をトラコルーラの日曜市に案内するよ!」
くまちゃんがかわいいです。

オアハカの周りの村では、各曜日に市場が開催されています。



メキシコにいるうちに搾りたてジュースを思う存分飲んでおこうと、脅迫観念じみた姿勢でわたしはオレンジジュースに向き合いました。

色付きじゃないひよこが、わたしには珍しかったです。
子どもの頃お祭りで見たひよこは、もっと毒々しいケミカルな色をしていました。

日本の派手なヒヨコを、そういえば最近は見ていません。絶滅したのかな。

これ、オアハカ名物だよ。
先輩が教えてくれました。

その名もオアハカチーズ。持ってみるとずっしり重いです。

裂ける!

裂ける裂ける!

ながーいチーズを裂いて楽しみます。日本の裂けるチーズもこれが発祥なんだとか。
おいしいたのしいだいすき、でした。

しかしチーズを食べながらどっさり並ぶ靴を見ていると、チーズ臭が自分の靴臭さに思えてきて、萎えました。




雑貨も衣料品も、クオリティが高いです。



観光用のころんとした車が生き物みたいで愛くるしかったです。


お花のように美しくカットされたマンゴーは、食べづらいけれども満足度の点で有効でした。

先輩はバッグを爆買いしていました。

わたしは木のまな板とお玉を買いました。かさばりました。

地元の売り子の方々も後頭部の西尾先生に好意的で、笑顔が何よりほっとしました。



人でごった返す建物内のメルカドでは、後頭部の珍しさに軽いパニックが起きました。

人波にもみくちゃになって深呼吸です。




頭、からだ、皮。
豚がいろんな格好になっています。
初めて見た時はぞわっとして目を背けてしまいましたが、2度3度と見るうちに慣れました。
西尾先生と社会科見学をしているような気持ちでした。

皆、活気に満ちています。


豚の首ちょんぱも、鶏の足のぶつぶつも、何もひるむようなことじゃない、これが自然の姿なんだと、お母さんたちの力強い笑顔に諭されている気がしました。

市場につまっているたくさんの命に、静かに手を合わせました。



お昼ごはんを食べました。
いつもよりも心をこめて、「いただきます」を言えた気がします。


お肉や野菜をその場で焼いて食べることもできます。
先輩が何種類か焼いてくれました。
おいしいのでした。
ダイレクトな食物連鎖体験をしました。



ごちそうさまでした本当にごちそうさまでした。

外に出てココナッツミルクを買ったら、武内さんに「くるみちゃんのうしろの女の子半額で買ってたよ。」と言われて、あっ…。さみしく思いました。
外国人価格だったけど、冷たいココナッツミルクは生絞りオレンジジュースに並ぶ感動的なおいしさでした。

町の中心にあるのはゴシック建築の教会です。
先輩がガイドをしてくださいました。
物凄い執念を感じる、豪華絢爛な装飾はもちろん素晴らしいの一言なのですが、なんだか暑苦しくも感じられました。そして外は実際、真夏並みの厳しい日差しでした。

風に踊る三角旗は、空にいく筋もかかった虹のようです。

先生らしいことは何もできませんでしたが、トラコルーラのメルカド、満喫してきました。

小学校の給食の時間を思い出して、背筋を正して「いただきます」「ごちそうさま」をきちんと言うと、おざなりになっていた食物への感謝が鋭く感じられました。
初心に帰れた、良い体験でした。
多分すぐまた忘れてしまうけど、その都度思い出しては立ち返りたい、市場の、生の光景でした。



西尾先生、どうもありがとうございました!

新学期が始まりますね!
給食が食べられていいなあ。
いただきます、ごちそうさまでした、ありがとうございました!