後頭部ビジネス

若木くるみの後頭部を千円で販売する「後頭部ビジネス」。
若木の剃りあげた後頭部に、お客さんの似顔絵を描いて旅行にお連れしています。


*旅行券の販売は現在おおっぴらにはしていません。*

2015年4月11日土曜日

松本さんとポリフォルム・シケイロス

松本さんです。
たぶん会社員です。
武内さんとの共通の友人です。


描けました。
なんか顔、長くない…?
松本さんのほっそりしたイメージが先行して、細身の顔に仕上がりました。

左手に立っているTシャツのおじさんが、何番バスに乗ればいいのかを懇切丁寧に教えてくれました。
ついでに雑談にも花が咲きます。

「日本人?」
「ここの学生か?」
「どこかの学生か?」
「社会人なのか?」
「では何者か?」

少なくとも後頭部の松本さんは社会人なんだから、適当なところでイエスと言えばよかったのですね。

わたしが気になっていたのは、なぜこの辺のバスは無料なのか、学生でも市民でもないただの観光客までなぜ無料で乗れるのか、収支はどうなっているのかという不思議だったのですが、言語の壁により踏み込めませんでした。

別れ際の「さようなら」を、本来スペイン語で「アディオス」と言わねばならないところも間違えて「チャオ」と言ってしまいましたが、かえって国際派に見られたかもしれないと思うと興奮しました。
おじさんがイタリア人っぽい顔をしていたために、つい「チャオ」が出てきてしまった、わたしの無意識の優秀さに気づいてくれますように!

地下鉄の反対側のホームはなかなか列車が来ないらしく、片足に重心を置いて天を仰ぐ人々が多発していました。

駅の混雑ぶりは、夕方の通勤ラッシュだからかと思いましたが、どうやら遅延によるものだったようです。

コンスティトゥ…なんとか駅(長くて読むのを放棄した)で降りて、バラガン邸に行きました。
前回来た時は無人でしたが、今日は扉が開いています。
よかった!
しかしスタッフの方に見学を申し込むと、今日はもうクローズよ、と肩をすくめられました。

得意の泣き落としで頼み込みましたが不成功に終わり、仕方なく、明日の予約を取りました。
名簿は既に埋まりかけていて、時間帯も細かく書き込まれています。
予約を取れただけで大進歩と思うことにしました。

松本さん、ご足労申し訳ない!
これはバラガン邸の向かいにあった自転車です。
サドルが高くて跨がれませんでした。

コンスティなんとか駅の出入り口には、黒ずくめの男たちがうじゃうじゃしています。
警官です。
ポケットに手を突っ込んで、ゆるい笑みを浮かべている様子はまるで族です。
メキシコシティ在住のまあやさんの、警官にいちゃもんをつけられてお金をせびられた体験談を思い出しました。「こっちの警官は薄給で地位も低いから、めちゃくちゃなんだよ。気をつけてね。」

警官が絡みたくなくなるような際どい人相をつくって、武内さんの手をぎゅっと握りしめ、いけない2人に見えるように、ダーッと警官の包囲網を駆け抜けました。




「ポリフォルム・シケイロス」まで歩いて行こうとして迷いに迷い、もう近くかなと思ってお散歩中の老夫婦に聞いてみると、「超遠いよ」と言われて諦めました。
しかし踵を返して歩き出すと、「ごめん!  ポリフォルムね?  こっちよ!」と、再び老夫婦が駆け寄ってきてくれたのでした。
案内役を買って出てくれた老夫婦に感謝しながらも、そのゆっくりしたペースに焦りが募ります。
ポリフォルム・シケイロスの閉館時間は午後6時。
もう間に合いません。

でももう、6時になるところだったけど、見せてもらえた!
予想外の計らいに、喜びを爆発させて館内に入りました。

    

圧倒。
圧倒的なボリュームです。
館内に漲るエネルギーのうねりの中で、ただただ、声もなく圧倒されました。

ぐるっと壁面を覆うこの作品は、シケイロスが手がけた中でも最大の壁画なのだそうです。

タイトルは、『La marcha de la humanidad(人類の行進)』。

人類が未来へ向かうためのメッセージを込めた壁画です(資料コピペ)。


しかし感動で打ち震えるわたしに、武内さんはボケーっとした顔で「わたしは感じない」とか言って水を差してきて、そう言われるとわたしももう自分の感受性がただのミーハーな代物にしか感じられず、さっきまでの感動が激しく揺らぎました。

なんでなんで、何がだめなの!?

…いいじゃん!!
だめ!?
ギャーギャーわめいていると、武内さんがだめじゃないよとなだめてくれて、「半立体ってとこに興味がないだけかも。平面で勝負しないんだーって思ってるのかも」と解説してくれたので、じゃあいいやと納得しました。
わたしは元々レリーフが好きだからいいです!
ポリフォルム・シケイロス、素晴らしかったです!!
自信がなくてすみません!!!

二階にあるシケイロスの壁画の後で、まだ時間が大丈夫かを確認して、一階の現代作家のグループ展を見ました。

日本の浮世絵や春画を題材にした作品もありました。

へえー。
さっきの武内さんの真似をして「あんまり感じない」と言って去ろうとしたら、奥行きのある画面に突然ランプが灯りました。
びっくりしてめちゃくちゃ感じた。


ショップの電気はもう消えていましたが、作品を見せてもらえて本当によかったです!

ありがとうございました!
受付の方に何度もお礼を言って外に出ました。


庭の壁画もユニークでした。
バラガン邸、フリーダカーロの家、その他あらゆる美術館。
曜日や時間が合わず連敗が続いていた目的の美術館にやっと入れて、肩の荷が下りた気がするなあ…と思っていたら、本当に、肩の荷がない!!
トートバッグを二階に忘れてきてしまいました。
しかも出国前に松本さんにもらったトートバッグ…!


青ざめましたが、ダッシュで引き返して無事に回収できました。
受付の方に、お礼を一からやり直しました。

ポリフォルム・シケイロス。
12枚の壁画で形成された頑丈な鎧のような外観が目を引きます。
堅い外観とは裏腹に、受付の方が柔らかい物腰なのも泣けました。
自信を持って、ポリフォルム・シケイロスおすすめです!

帰り道、地図を広げてまたしても途方に暮れていると、日本語を学んでいるという女の子が現れてあれこれ手を焼いてくださり、無償の愛を感じました。

ブエナビスタ駅のそばの、まあやさんおすすめのスープやさんでごはんにします。

アーティスト風情のアメリカ人に早速後頭部を撮られました。
アーティスト風情とか言っていたら後に本物の写真家だとわかって、たじたじしました。

スープが来ました!
汁のほうが少ないぐらい、お肉に豆に野菜にと、とにかく具沢山のスープです。


二種のスープのひとつは辛くて、ひとつはやさしくて、ただしどちらにも家庭のあたたかみがありました。
無心で食らいました。

すると、なんとスープ皿の中身が半分になるとお店の方が自動的にスープを継ぎ足してくれるのです。
何度も、何度もです。
食べても食べても減らないお皿って、子どもの頃に読んだ絵本の世界と同じでした。
魔法ってメキシコにあったんだなと思いました。



スープだけじゃなくて写真も、こちらが何も言わないうちにどんどんどんどん撮ってくださいました。
あまりに親切にしてくださるので、何かわたしたちに魔力が備わっている気がしてきます。
後頭部の松本さんの魔法かなとも思ったのですが、ただただ本当にお客思いのお店だったみたいです。
ものすごく繁盛していました。

毎日通いたくなるお店でした。
ごちそうさまでした!
今回はびっくりマークが多かったな!
たのしかった!
松本さんでした!
ありがとうございました!