後頭部ビジネス

若木くるみの後頭部を千円で販売する「後頭部ビジネス」。
若木の剃りあげた後頭部に、お客さんの似顔絵を描いて旅行にお連れしています。


*旅行券の販売は現在おおっぴらにはしていません。*

2015年4月3日金曜日

谷口裕太さん、高原都市を満喫

 
谷口裕太さん、札幌の方です。
あまり旅券を宣伝していなかった札幌でいち早く買ってくださって、男気! と思いました。

武内さんも、「一目見た時からあの人後頭部だと思ってた」そうで、よくわからないけど描きやすかったみたいです。

描けました!
柳楽優弥に似ていると思いました。
ロケに来たみたいでわくわくします。
 







通学時間なのか、下校時間なのか、町には子どもがたくさん歩いていました。


………地面に赤ちゃんが倒れている…! 
さーっと血の気が引きましたが、よく見たら人形でした。人形だったと思う。人形ですよね? 人形だと思いたかったです。
異国の、よその家の敷地に入り込めずにあとずさり。
…人形だと思います。

ちらばった木箱はよく練られた抽象画のようでした。

くだものやさんも絵本みたいです。

野菜や果物屋のカラフルさに比べると、肉屋は赤と白しかなくて、めでたいけど寂しいと思いました。

小さな商店のお店の奥にはしまい忘れのクリスマスツリーが輝きを失っていて不憫でした。

赤いセーターの女の子の笑顔のほうが、よっぽどクリスマスのきらきらを思い出させました。

兄弟仲良くお買いものをしている様子がとても微笑ましかったです。

道端で、タンドリーチキンがいいにおいをさせて開脚していました。
 
しかし開脚チキンはこちらの角度からだと、スカートが風にめくれたときのマリリンモンローみたいな、すぼめた脚に見えました。奔放さと恥じらいとの両面が楽しめました。

火に当たって暖をとりながら、ひとつ買いました。
鶏といっしょに、ビニール袋に入った野菜のピクルスもくれました。田舎のお母さんみたいでした。
 
野っ原に腰をおろしていただきます。
パリッと焼けた皮に歯を立てると、鶏肉の白い身がほろりと口内でほぐれました。香辛料で武装した内側は、やさしく淡白な味わいです。娘に例えると、「派手な化粧だけどおとなしい18歳」でした。

羊がいました。

羊は今年の年賀状でたくさん見ましたが、サラサラした毛の羊もいるんですね。羊といえばモコモコだと思っていたので意外でした。

落書きの男の子の毛はサラサラでもなくモコモコでもなく、なんか独創的な生え方をしていました。魂が抜けていく瞬間みたいでした。

砂山が道の大部分をふさいでいるのにびっくりしましたが、色が白っぽいからか不思議と圧迫感はありません。


レトロな車が曲線を極めていてかわいいです。


壁面の広告も、ちょうどよく古びていて周囲に馴染んでいました。

 


道に迷わないように、要所要所で写真を撮って歩きました。

パン屋さんです。
そっけない陳列棚でしたが、ぴらっと小さく貼られた値段が驚くほど安く、目を疑いました。

5個買って、確か全部で百円くらいでした。


おしゃれ写真を撮ろうとして、パン同士の間隔をどれくらいとるかで武内さんと言い争いました。

何にも期待しないで食べたパンは、持った感じは重いのに食感は軽いという説明不可能な食物で、狐につままれたような気持ちでした。武内さんに手渡して驚きを共有しました。
3対2の割合でわたしがたくさん食べた。
密輸入したいぐらいおいしかったです。

草間彌生の作品みたいにうじゃうじゃしている、猟奇的なバナナを見ました。

都市部に近づくと、赤い三角を乗せている車が目立つようになりました。


見つけるたびにいちいち写真を撮っていたら、三角車がずらりと整列している場所に出ました。
車やさんのようでした。

丘に登ってみようと、坂道に向かって歩きました。

ほころんだ梅が春の予感です。



  登っても登っても階段でした。
標高2100mのサンクリストバルに、着いた時から参っていたわたしの呼吸は途切れ途切れです。

こちらにはあまり観光客は来ないのか、アジア人が珍しいのか、我々に好奇の目が向けられます。

じろじろ見られはしますが敵対心は感じられません。皆おおらかに笑みを浮かべていて、「オラ」とメキシコの挨拶をすると、「オラ」と明るい声が返ってきます。

簡素な洗い場に、風にくったりしている洗濯物に、雑然とした玄関に、村人の労わるような眼差しに、彼らの内側から発光してくるような強いエネルギーを感じました。
一言で言うと、「明るい」でした。

登頂。
ほんの小さな丘でしたが、眼下にひらけるミニチュアの町に、ほっと吐息が漏れました。

  あんまり観念的なことを言いたくはないけれど、幸せについて、富について、考えずにはいられませんでした。

精神的な豊かさを重視する旅人特有の思想に染まりたくないと踏ん張る自分のあまのじゃくに、子どもらの尊いほどの無邪気な笑い声がかぶさって、わたしは息苦しさを覚えました。

確かに濃くなっていく夕暮れがセンチメンタルを加速させます。
命の明るさに触ったような、鮮烈な体験でした。

階段を登り降りしただけのほんのひと時が、いつまでも忘れられない映画のエンディングみたいに、胸にわんわん鳴り続けています。

ディープな体験って、何も、闇の世界とは限らないと思いました。
人の、ディープな明るい営みをわたしは垣間見たように思います。

谷口さん、メキシコは驚きがいっぱいでした。
ピカピカの観光地も良いけど、土の匂いもまた良いものでした。
地球に感謝です。
お疲れさまでした!
ありがとうございました!