わたしが寝付いた時、あきちゃんはベッドの上でノートやスケッチブックを広げていました。絵日記をつけているそうでした。
いままで武内さんが参加してきた大会は、サロマ、鯖、台湾など。
過去のマラソン大会で前夜眠れなかった率は100%だそうで、それでもどんなに睡眠不足でも、レース中ほとんど眠くならず走れる武内さんに、わたしは心からの畏怖と尊敬とを抱き続けてきました。
レース前眠れないのはあきちゃんのデフォルトらしく、今回も、「わたしは絶対眠れない。でも横になる。眠れなくても横たわっているだけで体は休めるらしいし」と得意げに宣言していました。
だけどわたしにはそれが効かなくて、いくら横になっていても頭が眠りをつかめないと翌日の眠気がひどいんです。体は寝ているのにうまく眠れないとなると、かえって眠れない状況にイライラしてしまってものすごく疲れる。睡眠剤の導入も本気で検討しましたが、「眠剤使っても興奮が勝って眠れなければ、レース中余計ボーッとする」みたいな話も聞くし……。
18時に眠れたのはいいとして、20時に目覚めてしまったりすると最悪なのでした。
だから、夢からふらふら醒めた闇の中で、「起きてしまった自分」を認識してしばらくは、こわくて時計を見られませんでした。
もう一度眠れないかしばらく待ってみたのですがだめでした。今何時かが気になってバッチリ覚醒。
隣ではあきちゃんが寝息を立てています。よかった寝ている。そして一体今はいつなんだ……。
そうこうしているうちに尿意まで催してしまい、ごめんねあきちゃん(起きないで)と思いながらそっとトイレに。意を決してスマホを見たら時刻は2時半でした。
めっちゃ寝てた。
18時から2時半……まあ2時までだったとしても、8時間睡眠!
よく寝たんですね〜。
さらにそっからもう一眠りいきましたからね!
なんか、レース前なのに緊迫感がないんじゃ、と不安になるほどよく寝ました。
4時20分にセットした目覚ましを使うことなく、あきちゃんが4時、行動開始(もし早く目が覚めても4時まで待とうねってルールでした)。
洗面所に向かって「おはよ〜」と声をかけると、「なんと、わたし、眠れたんだよ!!」という元気な声が返ってきて、色々うまくいきすぎでした。
あまりに幸先のよい朝。
おはようございます。
わたしは眠気に弱いけれど、あきちゃんは空腹に弱い。
おなかがすいた時のフラフラ感で、本当に動けなくなるそうです。
そりゃそうだろうなと思います。体脂肪率9%のちっこい体に、燃やせる脂肪の蓄えがあるはずありません。
なので、とにかく食べ続けることがあきちゃんの完走の鍵だそうで、朝起きてからスタートまでの食べっぷりが、わたしが言うのもなんですがものすごかったです。
バスの中にまでバナナ持ち込んで食べてる人初めて見ました。
周囲のランナーが、バナナを貪るあきちゃんの姿に「元気だねえ〜」と目を細めており、祖父母に大食いを見守られる孫みたいな、なつかしの光景が展開されていました。