後頭部ビジネス

若木くるみの後頭部を千円で販売する「後頭部ビジネス」。
若木の剃りあげた後頭部に、お客さんの似顔絵を描いて旅行にお連れしています。


*旅行券の販売は現在おおっぴらにはしていません。*

2017年10月26日木曜日

148km〜159km《若木》

大滝さんは、スパルタスロンに数多く参加されているレジェンド代表の方です。お医者さんでもあられます。
わたしと武内さんはふたりとも、昨年から大会に提出する診断書を大滝さんにお願いしており、また他にも多くのことをご相談させていただいてきました。
武内さんは、足首の違和感のこととか、腹痛のこととか、血尿のこととか、体の症状についてのこと。
わたしはというと、主に眠気のことでいつも悩んでいて、でも大滝さんも眠気にはとても弱いって。「自分も毎回眠気でつぶれる。解決策があるなら自分が知りたい」って。
それで、それぞれオリジナルの眠気対策を披露し合っていたのですが、わたしが「『ちんこ!』って叫ぶ」という、恥ずかしさで眠気を散らす方法を言ったらウケて、別にこっちはウケ狙いのつもりなく真面目に敢行してた秘策なんですけど……。
うなだれてたら、わたしの捨て身が大滝さんに通じて、真顔で「オーチンチンの歌」を教えてくれたりして(ユーチューブにある)、けっこう仲間内では、眠気覚ましアイテムとしてのちんこが流行っていたんです。

だから今回わたしのペースが落ちてふらつきかけたときも、「ちんこちんこちんこちんこ」ってちんこ4コールするだけで深刻度レベル4の眠気だとすぐにわかってもらえました。大滝さん、すかさず景気付けに「オーチンチン」を歌ってくれたのですが、物静かな大滝さんがそれ歌っても子守唄にしか聴こえない。かえって逆効果なんですよ! ちょっと歌はやめていただいて、わたし自ら努力しなきゃと思って、大滝さんに向かってどうかしてる下ネタをガンガンかましました。
握りしめていたお手頃サイズの氷を口につっこんで、「見て〜こうして出し入れするとちんこしゃぶってるみたいですよ〜」ってにやにやしたりとか……。
でも大滝さんはそれを無視。完全無視。
そこにいない人みたいな横顔をして淡々と走られて、そりゃあね、よろこばれでもしたらちょっといやだったとは思いますよ! でもせめて、怒ったり困ったり、少しはリアクション、ないと寂しいじゃないですか! 眠気も全然覚めないし、くそうと思って、「大滝さん、ちょっとちんこ触らせてもらっていいですか?」って言おうかと思って、思うとものすごくドキドキして、これは使えると思いました。もう一度やってみました、心の中で。「大滝さんちんこ触らせてもらってもいいですか?」もうすごい、耳とか熱くなっちゃって、うわーもう眠くないぞー! これ効くー!! って。三度目の「大滝さんちんこ(以下略)」をやってみた勢いで、ほんとに、ほんとに言ってみちゃおっかな? そう本気で思って、本気で思うとまた一からドキドキできて、……もちろんほんとには言わないんですけど。

自分に最低限のモラルが残っていて安心しましたが、「ついに最低まで落ちたか」とも思いました。秘蔵のちんこ作戦だったはずが効力落ちまくっていて、耐性できるの早すぎ、羞恥心失せすぎでした。そんなとこに適応能力発揮しなくともよいのだと思った。

そんなふうにしてどうにか、150kmあたりまで来たんです。
つづら折りの上り坂に入るところで、「わたし遅いしもう大丈夫です」と大滝さんに先行していただいて、大滝さんの背中が夜闇に消えた……ところでまた! 眠み!!

本当に後悔した。わたしは腹の底から後悔しました。
やっぱり大滝さんに「ちんこ触らせて」って言うべきだったと思って、やっぱ考えるだけじゃだめだった言わなきゃだめだった…と思って。
だめでした眠かったですー!

でも、前後する早歩きの外国人が数人いて、わたしがところどころ起きてちょこちょこ走って追い越すと、「ユーアーストロング」ってエールをかけてくれたりして、そうやって、なんとか、眠気のばかやろうが油断した隙になんとか走って、なんとか、なんとかかんとか、サンガス山ベースまで、なんとか今年も辿り着くことができたんです。