後頭部ビジネス

若木くるみの後頭部を千円で販売する「後頭部ビジネス」。
若木の剃りあげた後頭部に、お客さんの似顔絵を描いて旅行にお連れしています。


*旅行券の販売は現在おおっぴらにはしていません。*

2017年10月18日水曜日

5km〜50km《若木》

5km地点、強めの坂道に差しかかったところで武内さんについていけず、自然に離されました。他のランナーにもガンガン抜かれましたが、上り坂が弱いのはいつものことなので、悲観せずにマイペースを徹底しました。

序盤、武内さんについていったおかげで、関門時間に余裕がありました。
まだ始まったばかりで、余裕と言ってもほんの5分とか10分とか、小さな話なのですが、去年は30kmが関門2分前のきわどい通過だったんです…。
スロースターターのわたしにとってスパルタスロン前半の関門はかなり厳しい。5分でも10分でも、前半の貯金は何がなんでも死守すべき、貴重な時間なのでした。

でも、せっかくの貯金をありがたがる展開にはなりませんでした。
例年だと9時頃から強い日差しに悩まされるのですが、今年は曇りで涼しいまま。ペースは落ちず、苦しさもなく、着実に貯金が増えていきます。
この調子なら、今年に限っては関門アウトの心配はなかろうと判断して、20kmを越えたあたりから時計のチェックをやめました。

42km関門、「いつもよりこんなに速い」って思いたくてやっと時計を確認する気になったのですが、応援の人だかりに気をとられて数字が読めず、結局通過タイムも貯金もわからないままでした。

そうだ、後頭部をつくっていたせいで、各ランナーから相当声をかけられたんです。
わたしにも、その都度笑顔で応じる余裕があって、エールを交わすと実際励みになりました。
オリジナルのスパルタスロン仕様ユニフォームにも自信がありました。背中に書かれた、ギリシャ語の「ブラボー!」を読み上げる声が聞こえるたび、彼らからあたたかいエネルギーをもらえたようで元気が出ました。
それから、「あたたかいエールでもって元気に……って、おい」と思った。あまりの月並みさに自分で引いて、「今年は涼しいから! 暑い年だったらこのあたたかさは正常にうざかったはずだ」って。一生懸命ニヒルな自分を保とうとして、無闇に心を動かさぬように気をつけながら走りました。