後頭部ビジネス

若木くるみの後頭部を千円で販売する「後頭部ビジネス」。
若木の剃りあげた後頭部に、お客さんの似顔絵を描いて旅行にお連れしています。


*旅行券の販売は現在おおっぴらにはしていません。*

2017年11月12日日曜日

維持

自分はなぜ維持が苦手なのか。
答えは簡単でした。
気持ちが長続きしないからだ……。気づくの遅かった。

夏は練習がとにかくきつくて、暑いし焼けるし苦しいし、こんなしんどいこと二度とやれるかって毎日思っていました。
「これで最後」って言い出したのはあきちゃんより先に自分のほうでした。
でも、いざゴールして、あきちゃんとおしゃべりして、みんなにも会えたりして、そしたらどう控えめに言ってもたのしくて、気持ちは「また走りたい」に性懲りもなく変わっていました。

最終日、ホテル界隈を散歩していると、あきちゃんがふとアテネの街並をふり仰いで、「これで最後、…っと。」噛みしめるように、確かめるように言いました。
『これで最後これで最後これで最後これで最後』、声が頭に反響して、豪華な輪唱でした。

毎年毎年、「これが最後」ってことにしてギリシャに来ていたから、あきちゃんに悪いなあという気持ちなら、いつも少しはありました。でもわたしも決して、だまくらかしてるわけではなくて、その都度本気で「これで最後」と思ってやってきたから……。
問題なのはあまりにも簡単に気持ちが変わってしまうところで、その点に関してはほんとに悪いなあと思うんですけど。

今年も、例年と同じように自分の移り気をあっさり許すつもりでいたので、あきちゃんが「これがほんとに最後」という決意を見せてきて動揺しました。わたしの覚悟のなさをあきちゃんは見抜いていたんだなと思いました。
いよいよ今年が「これで最後」だったかと思うと、「なのにがんばれなかった」「もっとがんばりたかった」という後悔がとめどなく湧き上がり、涙腺がいかれた。

「あきちゃ〜ん。また来ようよ〜う。」
帰国後、愚かな男が彼女の機嫌を取るのとまったく同じ手口で、あきちゃんの説得にかかりました。後ろから抱きついて甘えてみたり、ヴィトンのバッグを買ったりなど(例えです)。あきちゃんは「またか」という顔でうんざりしていましたが、この調子で押し続ければなんとか押し切れそうでした。

でもそうこうしているうちに今度はわたしの熱が醒めてきてしまって、ほんとなんなの!? 我ながら絶句。心変わりの達人でした。
完走文が書けたからなのか、ゴールし終えた満足感が今頃になってやってきました。悔しさ、寂しさ、恋しさが日ごとに薄れつつあります。

そうか、こうやっていつもいつも気持ちが定まらないからなんですね。
これじゃあ練習もダイエットも長続きしないわけです。

あきちゃんが「くるちゃん来年も出ようよ!!」って言ってくれればいいのですが、あきちゃんがそんなセリフ言うはずないからなあ。
……維持なあ。