後頭部ビジネス

若木くるみの後頭部を千円で販売する「後頭部ビジネス」。
若木の剃りあげた後頭部に、お客さんの似顔絵を描いて旅行にお連れしています。


*旅行券の販売は現在おおっぴらにはしていません。*

2016年1月1日金曜日

大会当日

はっ、
いまいつ? いま明日なの? え、もう終わっちゃったってこと?
うそだあ夢でしょ?

目が覚めてもまだそこは夢、という夢の中で夢を見るマトリョーシカタイプの悪夢を繰り返して、それでも「夢を見ているということは今寝られてるってことだよな」という意識もわずかにあり、熟睡ではないにせよ、寝られました!
上出来!!

寝付くのに時間はかかりましたが、もし完走できなかったら武内さんの寝過ごし事件のせいにすればいいやと考えると無性に楽しくなってきて、しかしわたしはまだ怒ってる設定だったから布団の中で笑いをかみ殺すのがしんどかったです。

寝坊の悪夢が現実になることもなく、4時すぎ、廊下がざわつく物音で自然に目覚めました。ランナーたちの始動している物音です。

あきちゃんおはようございます。
若木起きます!
寝られました。
ありがとうございました。

厳かに宣言して行動開始。
レストランのオープンする朝食時間から、バスの出発時間まではタイトなスケジュールです。食事を終えたらそのまま出発できるよう、すべての荷物を持って階下へ降りました。

体力温存、精神力温存。
スパルタスロンは、246kmです。
36時間に及ぶ長丁場の闘いを控え、とにかく一歩も無駄にしたくありません。
一挙手一投足が貴重なエネルギーで、呼吸だって無駄遣いできない。いっそ息を止めてしまいたい……ってそれもうノイローゼじゃん。
精神力に問題が……。

レストランは規定時間には開いてくれなくて、10分が経ち、15分経ち、20分経ち…。
達観しているのはベテランランナーの方だけで、分刻みで朝の計画を練っていた多くのランナーの間に焦燥感が漂います。
頼むよギリシャ、さっさと食わせてうんちタイムくれよ!

我々はほぼ行列の先頭にいましたが、やっとドアが開くと、武内さんは走る人を優先にという気遣いから最後尾にまわりました。
テーブルについてわたしが震える手で黙々とカロリーを摂取していると、満面の笑みでやってきた武内さんは、
「今さあ〜、並んでる時大島さん(訂正前の仮名)が前にいてさ〜、声かけてきてくれたから昨夜のこと話したら、大島さんも『寝られる時に寝るのが一番いい』って言ってたよお。」
と超うれしそうに話すのでした。
うるさいな。あきちゃん経由で聞くとムカつくんですけど。

それから武内さんは、わたしが余計な体力を消耗せぬよう、希望の品々を代わりに取って来るまめまめしい働きを見せ、この献身に応えるには完走するしか……。

もしわたしがリタイアしようものなら、寝坊のせいにされることは武内さんにも容易に想像できているらしく、ふたりが別々のベクトルから、完走というひとつの命題に必死に立ち向かっているのが愉快でした。

成功も失敗も全て武内の力だ!