後頭部ビジネス

若木くるみの後頭部を千円で販売する「後頭部ビジネス」。
若木の剃りあげた後頭部に、お客さんの似顔絵を描いて旅行にお連れしています。


*旅行券の販売は現在おおっぴらにはしていません。*

2016年1月29日金曜日

空港

昨夜のパーティーでは「何時の飛行機で帰るのか」と何人もに聞かれましたが、走ることしか考えていなかった我々は帰りの行程を知りません。
「えーと……、お昼とか?」ぼんやり答えていましたが、チケットをようやく確認。「なんだ、合ってるじゃん! 12時05分だって。お昼だね。」
安心して寝ました。

翌朝のバイキング会場で、往路の飛行機でお会いした北海道の方と帰りの便も同じだと判明。ほっとして、またご一緒させていただきました。


余裕を持って空港に着きました。わたしたちふたりだけなら最後までドタバタやっていたに違いなく、安心感がすごいです。
北海道の方が無人チェックインカウンターでピピッとされているのを見て、「すご〜い、わたしも真似しよう。」ピピッとしました。

エラー。

あれあれ?
もう一度、最初から。ピピッ。

『ソーリー ウィキャント』

またしてもエラーです。
北海道の方に代わっていただきました。ピピッ。

エラー。

この時点で、システムエラーだな、とはひとつも思いませんでしたね!
疑いの余地なく、自分に非があるという認識でいました。
チケット取るの苦手なんです。待ち合わせでも仕事でも日にちとか時間とかよく間違えるし、この時も、やっちまったことを確信しました。もう慣れているせいで、一見どーんと構えているところがしくじりのベテランっぽくてよかったです。
だけど、内心は真っ青。
チケット、取り直さなきゃ……。カードあってよかった……。
うなだれてチケットを見返して、その時、北海道の方がこう言ったんです。

「あれ? これ明日の日付ですね。」

って……。

何がうれしいって、このまま乗れるっていうのが本当に本当にうれしかったです!!
ちょっと間違えただけだったね!!
武内さんと叩き合って大喜び。
北海道の方に、ドタバタを詫びてお別れしました。

「これからどうする?」
忽然と現れた空白の一日。
「観…光……?」
互いの腹を探り合います。

「荷物、重いよね。」
「足も、痛いしね。」
「風邪治ってないし」
「ギリシャ、情勢悪いんだったよね?」

心はひとつでした。
「空港に引きこもろう。」
インドア気質の本領発揮です。

「でもさ、空港で何すんの?」
「別に?  ものおもいにでもふけったら?」
題して、『空港24時間想』(寄せて『神宮24時間走』)。
24時間かけて走馬灯をまわし続ける、心の24時間マラソンです。

さほど広くないアテネ空港に丸一日座っていると、たくさんのランナーが来て、そして去って行かれました。日本の方も、外国の方も。

スパルタスロンはリタイアだったと言う台湾ランナーの方が、来年またチャレンジするとおっしゃるのでお守りを渡しました。昨年友人からもらって、今年も持ってきた、完走祈願お守り。「これで完走できたから!」って。そしたら彼からもお守り返しされたのですが、「これ、運気的に大丈夫ですか?」不安に思いました。

それから、大会中は話せなかった偉大なランナーの方とも少しお話できました。驕りもしないけれど卑下することもない率直な語り口、押し付けがましくない意識の高さ、そしてそれゆえの苦悩が垣間見られて、発熱しました。
トップランナーの、トップランナーたるゆえん。胸が打たれます。

空港、いいなと思いました。
待ち合わせをしなくても出会える場所。
搭乗っていう目的とリミットがあるから、みんな「じゃあ、これで」が言いやすいし、わたしたちも「また、どこかで」の言葉で気丈に送り出せました。

夜になると訪れるランナーはいなくなりました。
暇だ。

「あきちゃんさあ、完走したらアイスおごってくれるって言ってたよね?」
「言ってないよ。」
「はっ!? 言ったよ!」
「言ってない。『アイスおごって』って言われたから『うん』とは言ったけどおごるとは言ってない。」
「っだ〜!? (暴力行使)」


というわけで「ニルヴァーナ」という、その名もロックなアイスクリームをいただきました。なんかデザインも脳みそっぽいし、第一ニルヴァーナじゃないですか。だから何か、バッキバキにキマる非合法な成分が入っているに違いない、と疑うくらいおいしかったです。そのあと自分でも買って計3個食べました。