後頭部ビジネス

若木くるみの後頭部を千円で販売する「後頭部ビジネス」。
若木の剃りあげた後頭部に、お客さんの似顔絵を描いて旅行にお連れしています。


*旅行券の販売は現在おおっぴらにはしていません。*

2016年1月19日火曜日

こと切れる



月桂樹の冠をかぶせてもらうと、わたしは車椅子に乗せられました。


レース中、いっぺんも腰を下ろさなかったのは、
「座るともう二度と立てない気がしたから。」
これがかっこいいほうの理由。
ほんとは物理的にできなかったんですよ。
太ももが痛すぎて。
野ションも野グソも中腰でしたね。
座高が高いから隠しきれなくて、でもそこで恥ずかしがったら負けだと思って、仕方なくガンつけました。「見てんじゃねえ!」
悪いのは100%こちらです。お見苦しい場面を大変失礼致しました。でも「どうぞご覧ください」とも言えないじゃないですか。

人間らしさなんて、あっけないものです。この程度の極限状態で野生化してしまうのですね。


搬送された、ゴールすぐそばのテントの中には、簡易ベッドが並んでいました。


保健室よりも、野戦病院に近い印象。
靴をもがれ、靴下を脱がされ、素足にされて、消毒されます。
されるがまま。
うるわしのナースがきたねえ足を触っているのが忍びなくて忍びなくて……。


でも正直興奮もしました。
呼吸は浅いし、全身だるいし、歯が欠けているし(もともと)、わたしはほんとに、じじいになったような気分でしたよ。
「ネエちゃん、かわいいやないの、いっしょに写真撮ってくれへんか」って、演出としては枕もとにエロ本でもひそめておきたい気分……。


真っ黒に日焼けした手。
これも男優っぽいです。

ちなみに、後でウェアを脱いでみて、強力な紫外線は長袖の上からでも皮膚を焦がしていたことが判明。縫い目のラインだけが焼け残って、つーっと肌に浮いていました。

タクシーでホテルまで帰ろうとしたのですが、支えられて車に乗る、そのほんの2〜3メートルの間に急激に気分が悪くなって、わたしは地面に崩れました。
冷や汗が出て、手足の感覚がなく、体を支えられません。


すごい労力をかけて起き上がったのに、ほんの1分でわたしはまたベッドに出戻っていて、今度はもうおねえちゃんをナンパする元気もなく、おとなしく点滴されました。


横たわると吸い込まれるように眠りが訪れ、無抵抗のブラックアウト。
起こされた時には時間の感覚も何もなく、夢の最後の切れ端は体がバラバラになるシーンでした。


「おなかすいた。」
スタッフの方から水のペットボトルと大きなサンドイッチが与えられましたが、いざ食事に取り組もうとすると、パンを咀嚼して飲み込む作業がすごい離れ業に思えてきます。
そんな芸当、とてもじゃないけど今はできない。
できないことがありすぎる。
困った。


参ったなあ。