後頭部ビジネス

若木くるみの後頭部を千円で販売する「後頭部ビジネス」。
若木の剃りあげた後頭部に、お客さんの似顔絵を描いて旅行にお連れしています。


*旅行券の販売は現在おおっぴらにはしていません。*

2016年1月11日月曜日

努力は必ず

ゴールまで70km。
減り続ける時間の蓄えに恐れをなして、口呼吸を解禁しました。

わたしは心肺機能が弱く、いつも脚が終わるより先に呼吸器がいかれてしまいます。ゼーゼー喘ぎ倒すから周りのランナーにも騒音で迷惑をかけてしまうし、内臓に負担がかかって吐き気にもつながります。せめてラスト30キロまでは、穏やかな鼻呼吸を保って走りたい。

でももうそんな流暢なことは言っていられません。
予定よりずっと早い段階ですが、あと70kmぐらいなら、たとえ戻してしまってもガス欠にはならないでしょう。
遠くの1kmより、目先の1kmです。
とにかく一歩。次の50cm。左右に流れる景色を追う余裕はなく、ただ目の前の白線をすりつぶすように進みました。

この2年間は、苦しいレースの連続でした。
リタイアもたくさんしました。
自分のことを鉄人だと思い込んでいた2年前までのかわいい妄信は消え失せ、スマホの検索窓に向かって、「ダメだな」と吐露する毎日でした。

何がダメって、とにかく努力ができません。
甘くて弱くてがんばれない。

走り込み以外の方法で浮上のきっかけをつかめないかと、戦争の本などを開いてみました。
悲惨な状況下に置かれた方々の苦しみを覗けば、この怠惰から少しは抜け出せるんじゃないだろうか。
期待して読み進めているうちに、あることに気づきました。
苛烈な、抑圧された暮らしの中に、努力に類する単語ってひとつも出てはこないんですね。「忍耐」や「諦念」はあっても、「努力」はない。あれだけ過酷でも、努力はない。

「努力」って、恵まれた者にしかできない特権だったんだ。
「努力」を認められている時点でわたしはクソセレブのクソエリートで、「努力の余地あり」とは、死ぬほど感謝すべきゆとりの現状のことだったんだ。

AKBの女の子が高らかに宣言した、「努力は必ず報われる」のフレーズは本当だとわたしは思います。
努力は必ず報われるべきだ。
それは何も、努力している連中の心情を慮ってのことではない。
努力できるほど恵まれたチャンスを与えられている人間は、努力し、それに見合うだけの結果を残すことが責務であると思うからです。
全員必ず報われろと願う。
努力すら許されていない、膨大な数の、虐げられているだれかの上に、努力界が多分ある。報われなくては申し訳が立たないじゃないですか。


スマホに聞かなきゃ自分がダメかダメじゃないかもわからないようなわたしがでかい口をたたいたりして失礼致しました。